世界一の剛腕女王・竹中絢音が語るアームレスリングの魅力。「目で喧嘩を売っていると思います、常に(笑)」
共通する2つの攻め方「吊り手」と「噛み手」
――これまで対戦してきた選手の中で、強い選手に共通しているポイントはありますか? 竹中:横に倒す力が強いことだと思います。アームレスリングには大きく2つの攻め方があって、まず縦の動きが強いのが「吊り手」で、相手の手を引っ張ることで相手の力を出させづらくする戦い方です。逆に、横の動きが強いのが「噛み手」で、お互いに力が出しやすいポイントを探りながら、自分の力を生かして相手を倒すスタイルです。相手をマイナスにするのが“吊り”で、自分の力をプラスにするのが“噛み”というイメージです。ただ、最終的に倒すのは横の力なので、吊り手で縦に引っ張る動きが強すぎると、方向が合わなくて倒す力が弱くなる場合もあります。自分の力を相手に伝えるのがうまい人も、試合では強いですね。 ――テクニックがあるんですね。竹中選手の強みや、スタイルについても教えていただけますか? 竹中:私は、縦が強い「吊り手」ですが、その中でも、横に行く軌道が強いのが特徴です。相手の良さを消しながら、自分の強さを出していくイメージです。相手の腕を引っ張って、肘が伸びた状態で巻き込むと倒しやすいのですが、私は基本的に肘が伸びないので、肘から腕までの塊の部分も強みだと思っています。懸垂をするときは、そのイメージでトレーニングをしています。 ――練習相手はほとんど男性なんですよね。体の大きな相手に勝つために、特に工夫していることはありますか? 竹中:身長自体はアームレスリングの有利・不利には直結しないんですが、競技台の高さもあるので、背が低い選手は厚底の靴を履いて、その分を補っていることが多いです。体の大きさを意識するというよりは、対戦相手によって、力が強い位置がどこなのかをよく見るようにしています。たとえば、手の先が強い人なのか、それよりも下が強い人なのかによって、戦い方が変わってくるんですよ。 ――それを短時間で見極める判断力が必要なんですね。やりづらい相手はどんなタイプですか? 竹中:私は身長が156cmで、日本女性では普通だと思いますが、やっぱり世界だと低いほうになりますし、自分の55kg級の階級では2番目ぐらいに低いんです。そうなると、相手のほうが腕が長くて、手の位置が自分よりも高くなるので、競技の特性上、テコの原理が働いて、高い位置からの重さに対して対応しづらいところはありますね。練習ではそういう相手のことも想定したトレーニングをしています。