毛をなびかせ駆け寄る愛犬…急逝後に制作 約60時間の作業中「不思議と涙が出なかった」
60時間の制作「あの時間がなかったら…」
そんな大治郎が急に亡くなってしまい、悲しみにうちひしがれていた大源さん。そこで、数年前から制作するようになった羊毛作品として、大好きな大治郎の姿の一つ「ボール遊びをしているときにボールを持って駆け寄ってくる様子」を、再現するような作品を作ることに決めました。 トータルで60時間ほどの制作中は、「とにかく『大治郎はかわいいなあ』と思い続けていた」そうです。 大治郎が走っている写真を複数枚並べて参考にしながら制作をしましたが、その写真を見続けることで「幸せな日々は確かにあったのだと、亡くなるときのつらい状態がすべてではないんだと自分に言い聞かせていました」。 「作業中は不思議と涙は出なかった」といい、「作るためには泣いてはいられないので、淡々と手を動かすことができました。あの時間がなかったら、いまでももっと『ロス』状態だったと思っています」と振り返ります。
あたたかなリプライ続く
作品を完成させると、「こんなにも愛された大治郎というワンコがいたのだということを誰かひとりにでも見てもらえたらうれしい」と思い、市の展示会に出品することにしました。 作品名は「大治郎十五年間ありがとう」。奨励賞を受賞し、寸評には「家族の一員としての愛情が十分に伝わってくる」とありました。 大源さんは「賞がいただけるとは思っていませんでしたし、あたたかい寸評をいただきとてもうれしいです」と語ります。 この展示会のことをXで「大治郎ありがとう」という言葉と共にも投稿すると、3万件近くの「いいね」がつきました。 「少し前のことですが、今回出品した『フライング大治郎』が完成した際に『浮かせて飾れるように夫が台を作ってくれた』とポストをしたときに、3万以上のいいねをいただきました。あの時も今回も嬉しい反面どんどん拡散されていくさまが恐ろしくびくびくしていましたが、とても優しくあたたかいリプライや引用ばかりで本当に感謝しています」 なかには技術面を評価し「本物に見える」というコメントや、「愛情を感じる」「泣いた」といったコメントも。 「大治郎を失ったことがあまりに辛く、『もう会えないんだ』『全てなくなってしまった』と悲しみばかりの毎日でしたが、大治郎の存在が初めから全て消え去ったわけではなく、確かに存在していて、私にたくさんのことを遺してくれたのだと思えるようになりました」