ん? それは……カワサキが新しいモビリティ開発に「パナソニックサイクルテック」と協業合意
小型パーソナルモビリティ、さらに原付以下を思わせる開発に着手か
カワサキと言えば、大型バイクや高性能なスポーツ系、もしくはオフロード系に絞り込んで昨今、日本のバイクメーカーの中では当たりまくっている印象でした。まさに、深謀遠慮の川崎重工のもとを離れて「カワサキモータース」として“自由”を謳歌しているように思えたのですが、ここへきてちょっと驚きの発表がありました。2024年10月29日のニュースリリースです。 【画像】カワサキの電動3輪ビークル「noslisu(ノスリス)」シリーズを画像で見る(8枚)
──カワサキモータース株式会社とパナソニックサイクルテック株式会社は、モーターサイクルの設計思想と、電動アシスト自転車の駆動ユニットを組み合わせたモビリティの開発に向けた協業に合意しました── パナソニックグループの中でも、サイクルテックは自転車を基本に、そこから進化する新しいモビリティを開発する創業70年の企業です。『サイクルモビリティのリーディングカンパニーになる』をビジョンに掲げた自転車界のリーディングカンパニーです。 一方、カワサキは「漢(オトコ)、カワサキ」という言葉に象徴されるバイク界の硬派。国内4社の中でも唯一、ラインナップに原付バイク(排気量50cc以下)を持たないことで知られてきました。 50cc原付の新車が販売不可能になる原付市場の変化をとらえたのでしょうか。担当者に聞いてみました。 「原付市場を見据えたというより、持続可能社会を実現する環境負荷低減や、ライフスタイルの変化を考えた協業とお考え下さい」 そのヒントとなる言葉は、リリースの中にもありました。 ──カーボンニュートラルや労働力不足をはじめとする社会課題の解決に加え、昨今は多様化する人々の価値観やライフスタイル、ビジネススタイルへの対応が求められています── 確かに、カワサキは電動アシスト3輪自転車の「noslisu(ノスリス)」(フル電動仕様もあり)を市場投入していました。前輪の間隔を広げた前2輪+後1輪で走行安定性を重視する余り、普通自転車とはみなされず、自転車走行可能な歩道でも走行できない弱点はあったものの、利用者から高い評価を受けて、原付以下クラスの新しいパーソナルモビリティの予感をもたらしました。この系譜を継ぐものなのでしょうか。前述の担当者は話します。 「カワサキモータースは『航空用レシプロエンジン事業への進出を目指す』ことも発表しています。将来を考えると、新たな事業領域に挑戦することが必要であると考えました」 電動アシスト3輪自転車の「ノスリス」は惜しくも2023年10月に販売中止となりましたが、航空機用レシプロエンジンへの進出発表は同年12月のこと。空から陸へ、ウイングの幅が斜め上を行くダイナミックさがあります。 両者の協業で、どんな新しいモビリティが誕生するのか。前出のリリースにはこんな記載があります。 ──カワサキモータースのモーターサイクルの経験を活かした車体設計を担当し、パナソニックサイクルテックは、電動アシスト自転車の開発経験を活かし、乗り味を強みとして最適に調整された駆動ユニット、リチウムイオンバッテリー、電装部品等の供給を行います── 電動車のバッテリーは充電劣化などの性能だけでなく、発火の原因となる衝撃に強い耐久性とバランスした手ごろな価格が求められます。サイクルテックが供給するこうしたバッテリーや駆動ユニットが実現する先は、もしかすると電動アシスト自転車の上位機種となる、特定小型原付自転車や一般原付に照準を合わせていることになるのでしょうか。 排気量50ccクラスのエンジンバイクが退場し、125ccのエンジンを出力ダウンさせた新基準原付が進出するとされる国内原付市場ですが、電動バイクが加わって車両価格の上昇が予想される中で、軽量コンパクトな電動アシスト自転車から進化した小型モビリティの出番がやってくるのでしょうか。 サイクルテックの提供する車両は、すでに他の国内バイクメーカーが発表した試作車についても採用されています。 市場再編に向けた動きが、あわただしくなっています。
中島みなみ