<集団的自衛権を考える> どの国が対象? どこまで派遣? 今後議論が必要なテーマとは
集団的自衛権の行使が可能となると、日本としてどのように対処、あるいは行動することになるのでしょうか。 【図表】与党が検討した集団的自衛権などの15事例 「事例編」で説明した15の事例のうち8つは「集団的自衛権」のグループと呼ばれていましたが、はたしてそのようにみなすのは適切か問題があると指摘しました。その点はさておき、かりに集団的自衛権の問題として考えると、それぞれの事例について、閣議決定で定められた「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し」「わが国の存立が脅かされ」「他に手段がないとき」および「必要最小限に」という4つの要件が満たされているか否かを判断し、満たされていれば、国会の承認を事前に得ることが原則ですが、自衛隊を派遣し、武力攻撃の排除に参加することになります。
「密接な関係がある国」とは?
まず、「わが国と密接な関係がある国」ですが、その意味は、国会審議においても、また、今回の閣議決定においても説明されていません。集団的自衛権を世界で初めて認めた国連憲章も「個別的または集団的自衛は各国の固有の権利である」と規定しているだけです。そのため、集団的自衛は相互防衛を内容とする同盟条約を前提にしているという学説もあります。それでは狭すぎるとしても、どの国でも対象になるのではありません。同盟条約に近い関係にあることが想定されていると考えるべきでしょう。 実際に政府・与党での検討や国会審議でこの点が議論となりました。日本と「密接な関係にある国」とは米国のことだというのは誰もが考えることですが、安倍首相は米国に限られないと明言しました。与党のなかには、韓国も含めるべきだという意見があると伝えられています。結局、どの範囲の国を助けるのか、はっきりしないままになっています。
「自衛隊派遣」はどこまで?
以上は「武力攻撃を受けた国」の範囲の問題ですが、実際に自衛隊が派遣される場所についても議論があります。両者は一致していることが多いでしょうが、理論的には米国が攻撃された場合に公海上の米艦船を救援することはありえます。しかも大西洋のように遠く離れたところもありえます。同盟国を助ける点では同様の状況であった第一次大戦では、日本海軍の艦艇は地中海まで派遣されました。 また、自衛隊の派遣先に韓国を含めると台湾も含めることになる可能性があり、そうなると日米安保条約との整合性の点でも、中国との関係でも困難な問題が出てくる恐れがあります。 派遣先について閣議決定は直接的に述べていませんが、国会審議で安倍首相は、「海外派兵ができないのはいままでと同じ」と繰り返し説明しました。しかし、自衛隊を日本の外へ派遣することができないのであれば集団的自衛権を行使できないのと同じことではないでしょうか。それでは集団的自衛権の行使を認める意味はないという考えもあります。