Amazonの「当・翌日配送」、米国60%・東京75%達成
米アマゾン・ドット・コムがEC(電子商取引)事業で、当・翌日配送を急拡大している。2023年は会員向け配送で過去最速を達成したが、24年1~3月は再び記録を更新したという。 ワールドワイド・アマゾン・ストアーズ事業のダグ・ヘリントン最高経営責任者(CEO)が公式ブログで明らかにした。今後も顧客満足度向上を目指し、設備投資を続ける考えだ。 ■ ロンドン、東京、トロントで75%を当・翌日に配達 ヘリントン氏によれば、アマゾンは24年1~3月に世界で20億点を超える商品を翌日までにPrime会員に届けた。24年3月には、米国の上位60の大都市圏において、会員注文商品の約60%を当日または翌日に届けた。この比率は、英ロンドンや東京、カナダ・トロントでは約75%だった。 アマゾンは急ぎ便の対象商品を拡大している。同社が有料会員プログラムのPrimeを始めたのは05年だった。当初は、100万点の商品を追加料金なしの翌々日便の対象としていたが、現在の対象商品は3億点以上に上る。ヘリントン氏によれば、これはPrime開始当初と比べ、2倍の速さで配達できる商品の数が20倍以上になったことを意味するという。 アマゾンは、今後もフルフィルメントセンター(発送センター)と輸送ネットワークの「リージョナリゼーション(地域化)」を通じて、物流の迅速化と効率化を図る。配送速度を向上させるとともに、サービスコストの低減も目指すとしている。
■ リージョナリゼーションで迅速配送とコスト削減 アマゾンの物流施設は、20~22年の新型コロナウイルス感染拡大によるEC需要増を受けて急拡大した。 同社はかつて米国内の配送網を「ハブ・アンド・スポーク」と呼ばれる、集中型の全国モデルで運営していた。顧客が望む商品は例えコストがかかろうと全米規模で移動していた。 だが、コロナ下でこの方式を改め、リージョナリゼーションを進めた。具体的には、全米の自社物流網を8つに分割し、地域それぞれで自己完結できるオペレーションに切り替えた。これにより、顧客に最も近い倉庫から出荷し、商品は特別な場合を除き各地域間を移動しないようにした。 アマゾンによると、この取り組みは成功した。ラストマイルと呼ばれる、倉庫から顧客宅までの商品移動距離が縮小し、ミドルマイルと呼ばれる倉庫間移動における荷物取り扱い回数(タッチポイント)が減少した。あらかじめ適所に在庫を移動しておけば、コストが抑えられ、注文から配達までの時間も短縮されるというわけだ。 アマゾンのCEOであるアンディ・ジャシー氏は24年4月、株主宛ての書簡で、商品を顧客に届けるコストである「サービスコスト」が削減されたと説明した。米国では商品1点当たりの平均サービスコストが前年から0.45ドル以上減ったという。 ■ セイムデーサイト、米国で約55施設が稼働 同社は「セイムデーサイト(即日配達拠点)」と呼ぶ倉庫のネットワークも拡大している。このセイムデーサイトは主に大都市近郊にあり、1施設当たりの大きさはフルフィルメントセンターの数分の1程度である。アマゾンのECサイトで人気のある約10万点の商品を常時置き、一部は数時間で配達している。米CNBCによると、現在、米国では約55のセイムデーサイトが稼働している。 アマゾンのジャシー氏は株主宛て書簡の中で、商品を迅速に届けることで、顧客はアマゾンをより頻繁に利用するようになっていると説明。「その結果は、食料品などの日用品事業の急成長など、様々な分野に表れている」と強調した。 米小売り最大手ウォルマートや米ディスカウントストア大手のターゲットなどが配送サービスを強化するなか、アマゾンもこの分野への投資を続ける考えだ。ウォルマートは注文から30分以内の配達サービスをアピールしている。ターゲットは24年3月、35ドル(約5500円)以上の注文で1時間以内に届ける新プログラムを開始しており、競争が激化している。
小久保 重信