漫画家・猿渡哲也の「烈侠伝」 第5回ゲスト・かたせ梨乃「もし、『極妻』新作を演るとしたら今まで経験してない役を」
■〝姉〟岩下志麻との出会いと失敗談 猿渡 かたせさんといえば、『極妻(極道の妻)』シリーズも印象的です。僕としては岩下志麻さんとのコンビがやっぱり一番しっくりくるんですよね。 かたせ 志麻さんは本当に大好きで尊敬してやまない大切な〝お姉さん〟。日本映画ならではの様式美を演じられる最後の女優さんだと思います。 最初にお目にかかったのは、NHK大河ドラマ『草燃える』(79年)でした。志麻さんが主人公の北条政子、私は女盗賊の小観音役。大河ドラマデビューで右も左もわからない20歳そこそこの私にとって、志麻さんは雲の上の存在でした。 それから月日を経て、29歳のときに『極道の妻たち』(86年・東映)で再びご一緒させていただきました。 猿渡 やはり、緊張しましたか? 僕はこの連載で岩下さんと初めてお会いしたときに、すごく緊張してしまいました。 かたせ いやもう、それは。志麻さん演じる姉の環に妹の真琴を演じる私が指輪を買ってもらう場面は震えが止まらなくて。スタッフがあの手この手で対処してくれるんですけど、やればやるほど、手が震えちゃって(笑)。最後は台の上に腕を置いて固定して撮影。 でも、志麻さんは嫌な顔ひとつせずにずっと付き合ってくださって。後輩に対してまったく上から目線ということはなく、本当にすてきな方です。 猿渡 この前、岩下さんが笑福亭鶴瓶さんの番組に出演されたときに幻となった『極妻』シリーズの総集編企画についても語られていて。 かたせ 見ました! お姉ちゃん(岩下志麻)から〝梨乃ちゃん、出演するから見てね〟とご連絡をいただいて。岡田裕介さん(東映・元社長)が温めていた企画だったとか。 猿渡 もし、この先、『極妻』シリーズが新たに立ち上がるとしたら......。 かたせ どうなんでしょう、当時は錆色をした演歌調のような世界観でしたけど、今ならアメリカ映画のような、もっとメタリックな感じになるんじゃないかしら。 猿渡 メタリック!? かたせ そう、もっとトーンがスチールっぽいというか、テクノっぽい感じですね。 猿渡 もしオファーを受けたとしたら、どんな役を? かたせ 志麻さんはずっと一貫して姐さんじゃないですか。私は作品ごとに違う設定の役を演じさせていただいたので、もしお引き受けするとしたら、今まで演じたことのないキャラクターを演ってみたいです。