2014年プロ野球、得失点差で振り返る ── 巨人はなぜ勝てた?
4月に出遅れたDeNAはその後もチーム状態が上がらないながらも負け越し10前後で踏みとどまっていた。そして6月にグリエルがチームに加わると打線が上向き、その後は勝ちが先行、5月から8月の成績はリーグトップ(46勝39敗)で3位以上も窺える位置まで盛り返すことに成功した。しかし勝負の9月にはまたしても打線が沈黙、結局は昨年と同じ5位でシーズンを終えることになった。最初と最後につまずいたシーズンを教訓に来シーズンは一層の飛躍を期待したい。 9月に入った時点で巨人、阪神、広島は2.5ゲーム差以内の混戦、ここで一気にスパートしたのが巨人だった。広島、阪神との直接対決9試合で8勝1敗、勝負どころで一気に力を発揮し瞬く間に大勢を決してしまった。9月以降の得失点はプラス51と圧巻の数字、優勝を争った阪神がマイナス7、広島はマイナス10と息切れしたのとはあまりにも対照的な戦いぶりだった。及ばなかった阪神、広島は長年の課題を今シーズンも克服できなかったといえるだろう。阪神は貯金こそキープしたものの1年を通じての得失点差はマイナス、9月に失速する悪い伝統も払拭することはできなかった。広島は年間では得失点差でプラスをキープ、しかし勝負の9月以降はマイナス10で4つの負け越しと大事なところで力が出せなかった。得失点差は野村監督初年度のマイナス141から年々良化し昨年はプラス3で今年はプラス39、チーム力が強化されたことは間違いないだけに今後は如何に勝つかという点が課題となるだろう。緒方新監督がこのチームをどう引き継ぐのかに注目をしたい。
パ・リーグ 2強が突出、下位3球団は浮上のきっかけつかめず
次にパ・リーグ6球団をみていきたい(表2)。パ・リーグは4月からソフトバンク、オリックスの2強が抜け出した。オフシーズンにも積極的な補強を行ったソフトバンクは開幕から安定した戦いを繰り広げ、4月は得失点差31で5つの勝ち越し、5月もプラス12で4つ勝ち越しと着実に白星を重ねた。そのソフトバンクを上回ったのがオリックスだ。とくに4月は投手陣が絶好調、エースの金子が2度の完封、西は月間5勝を挙げチームをけん引、4月終了時点で貯金11と見事なスタートダッシュを決めた。この2チームは交流戦でもソフトバンク2位、オリックス3位と好調を維持し完全にほかの4チームを引き離してしまった。両チームとも想定とほぼ同じ程度の貯金を積み重ねており、勢いだけでない実力の伴った戦いぶりで下位チームのつけ入るすきはなかった。 他の4チームは苦戦した。前年のリーグ覇者楽天は開幕カードで3連勝したがその後は勝ちが続かず徐々に低迷、大エース田中の抜けた穴は大きく、それを埋めることを期待された新外国人たちは軒並み機能せずと苦しい戦いとなった。とくに田中離脱による失点の増加を得点力の強化でカバーする、という考えのもと鳴り物入りで入団したユーキリスが怪我もあってまったく働くことができなかったのは大きな誤算となってしまった。月間の負け越し数は5月から8月まで計ったように4つで推移、9月以降は勝ち越したが、得失点ではマイナスと真にチーム状態が上向くことはないままシーズンを終えてしまった。