大卒ルーキー髙橋直也が“ポゼッション化”が進む湘南で輝きを増す理由「パスは全部成功するくらいの気持ちで...」
チームは今季初の公式戦2連勝
昨季まではハイプレスやショートカウンターの印象が強かった湘南ベルマーレの“ポゼッション化”が進んでいる。 【PHOTO】“湘南のために!”最後まで声援を送り続けた湘南ベルマーレサポーター!(Part1) 山口智監督は常々「ボールを大事にしたい」と口にしてきたなかで、変化の兆候が見え始めたのがJ1第17節のガンバ大阪戦(1-2)だ。この試合では3バックの中央で守備の要を担ったキム・ミンテが負傷離脱。リベロの代役を任されたのは、サイドボランチ(インサイドハーフ)やアンカーが主戦場の鈴木淳之介だった。 キープ力や展開力に特長を持つ鈴木淳がリベロに入り、チームの攻撃が活性化した。中央で背番号30が相手を引きつけながらボールを運ぶことで、ビルドアップの循環が良くなってチャンスが増加。試合には敗れたが、シュート数で12対3と相手を圧倒し、キャンプからの取り組みが形となった一戦だった。 18節の名古屋グランパス戦(1-1)、19節のFC東京戦(0-1)も結果は伴わずも、相手のプレスを剥がしながら決定機を作るという狙いが表われる場面が見られた。 20節の川崎フロンターレ戦(1-1)、21節の京都サンガF.C.戦(0-1)は狙い通りのボール保持を見せられたとは言えない内容だったが、22節の浦和レッズ戦(3-2)でついに新たな戦い方が結実。また、4日後の天皇杯3回戦・東京ヴェルディ戦(1-0)も同様の戦術で勝利し、今季初の公式戦2連勝と勢いづいている。 チームのスタイルが移り変わるなかで、3バックの一角で輝きを増している選手が鈴木淳以外にもうひとりいる。今季に関西大学から加わったDF髙橋直也だ。 髙橋は先述のゲーム(G大阪戦~東京V戦)のうち、名古屋戦と浦和戦に先発出場。プレスに来た相手を寸前でかわしたり、機を見て前線の選手を追い越したりするプレーも得意な大卒ルーキーは、ふたつの試合で持ち味を存分に発揮した。 特に、湘南加入後、自身が出場したリーグ戦での初勝利を記録した浦和戦では、ウイングバックやサイドボランチへの正確なパスを始め、ポゼッションに欠かせないプレーでチームに貢献した。 出色の働きの背景には、髙橋が攻撃面のプレーに持つ自信とプライドがある。 「自分の特長は攻撃面なので、特に難しさを感じることなく精度の高いプレーを続けていかないと、自分が出ている意味はないと思っています。パスは全部成功するくらいの気持ちで、もっとやっていきたいですね」 右ストッパーの位置で相手を剥がしながらパスを通す姿は、16年~19年に湘南に在籍した山根視来(現・ロサンゼルス・ギャラクシー/アメリカ)を彷彿させる。高精度なプレーをさも当たり前のようにこなす髙橋は、今季のチームにおいて良い意味で特異な存在であり、今後、ポゼッションサッカーを継続するうえでのキーマンだと言えるだろう。 「近くでプレーする機会が多い(鈴木)雄斗君や(キム・)ミンテさんも『直也の感覚は間違っていないから、自由に、良さを出してくれ』と言ってくれている。先輩たちのおかげもあり、自分の良さを認識しながら戦えているのが、自分の攻撃面が上手くいっている要因かなと」 負傷離脱していたキム・ミンテも京都戦で復帰。21歳の鈴木淳と23歳の髙橋が積極的に攻め上がって自らの武器を振るい、空いた自陣の背後のスペースは30歳の主将がカバーするという、補完性に優れた3バックの出来が、今シーズンの結果を左右するかもしれない。 取材・文●岩澤凪冴(サッカーダイジェスト編集部)