横浜FCの42歳MF中村俊輔が語るプロ25年目覚悟「自分にしか出せないものを」
「もちろんチームとしてのやり方はありますけど、そういうのを忘れちゃうとサッカーをやっている意味がないというか、自分のなかで価値が下がっちゃうというか。自分のプレーをもっと出していけば見ている人も納得して楽しんでくれるはずだし、勝ち点も増えていくと思うので」 俊輔が口にした「そういうの」とは、言うまでもなく自分らしいプレーとなる。そして、今シーズンにかける覚悟と決意は背中に反映される。十の位と一の位を足して「10」になる「46番」をあらため、今シーズンからマリノスや磐田、日本代表で象徴としてきた「10番」を背負う。 昨年8月にFWイバが大宮アルディージャへ完全移籍した後は空き番となっていたエースナンバーの「10番」を、このオフに強化部から勧められた俊輔は即答を控えている。マリノスで3年目を迎えた1999シーズンから「10番」を託された、21歳当時の心境を思い出したからだ。 「1年目はいろいろとプレッシャーがあったけど、責任をもちながらプレーしたことはすごくいい経験になった。若い選手や下部組織から上がってきた選手がつけてはどうかとクラブには話しましたけど、最後は自分の意思でつけたい、と。もう覚悟ですね」 今シーズンもボランチが主戦場になる。15位で終えた昨シーズンの戦いで瀬古と安永が成長し、左利きの手塚が柏レイソルからの期限付き移籍を完全移籍に切り替えた陣容へ、センターバックとの二刀流でプレーする日本代表経験者の33歳、高橋秀人も加わった。 「今年は番号も番号だし、去年より長くプレーするなかで自分の色を出したいというか、自分にしかできないものを出せるかなという感触はあります。そうじゃないと自分が面白くないので」 俊輔が出せる色の代表格に直接フリーキックがある。2017年9月を最後に遠ざかっている伝家の宝刀が抜かれれば、神様ジーコがもつ41歳3ヵ月12日のJ1最年長ゴール記録が更新される。 動画投稿サイトYouTube内のクラブ公式チャンネルで開催されたイベントで、自分が先にジーコを超えてちょっとだけ余韻に浸った後に、今シーズンを54歳で迎えるFW三浦知良に更新してほしいと語っていた俊輔は、苦笑しながら「あれはサービスというか……」と本心を明かした。 「そもそも1点を取るだけじゃ、というのがカズさんのなかにもあると思う。もっと点を取らなきゃいけないし、アシストもしたい。そういう欲はあります」 昨シーズンに自身がピッチに立ったリーグ戦は、実は2分け8敗とひとつも勝てていない。ただ単にJ1へ残留するだけではなく、10位以内に入る目標を手繰り寄せるゴールやアシスト、そして勝利を求めて、俊輔は封印してきたエゴイスティックな一面をポジティブに進化させていく。 (文責・藤江直人/スポーツライター)