タイトルからトリックが始まる! 配信ドラマがより楽しめる世界が認めた原作ミステリ解説 Huluオリジナル「十角館の殺人」
密室状態の孤島で起きる連続殺人事件
物語の舞台となるのは、海に浮かぶ孤島「角島」。この小さな島では、半年前に天才建築家・中村青司(仲村トオル)とその妻、使用人夫婦の4人の焼死体が発見されていた。事件後、角島は無人島となっていたが、青司が建てた十角形の外観をした奇妙な建物は残されていた。そこは「十角館」と呼ばれる屋敷であった。 その十角館を、K大学ミステリ研究会の男女7人が合宿で訪れる。推理小説マニアである7人は、それぞれエラリイ、アガサ、ポウなど人気推理作家の名前を愛称にして呼び合っていた。1週間の合宿中に新作小説を書き上げようと息巻く7人だったが、十角館の7部屋ある個室でそれぞれ一夜を明かした翌朝、惨劇が始まる。何者かによって殺された仲間の死体が見つかったのだ。外部との連絡は取れず、犠牲者はさらに増えていく。 一方、合宿前にミステリ研究会を退会していた江南孝明(奥智哉)は、推理小説好きな島田潔(青木崇高)と知り合い、中村青司の死をめぐる真相を探ろうとしていた。青司の謎を追う江南と島田、密室状態である角島で誰が殺人犯か分からずに疑心暗鬼に陥っていくミステリ研究会のメンバー。2つの物語が交差した瞬間、思いがけない真実が明かされることになる。 「叙述ミステリ」の傑作として「十角館の殺人」は名高い。また、叙述ミステリとしての仕掛けだけでなく、中村青司が設計した十角館には、意外な秘密が隠されている。米国の「タイム」誌が選ぶ「史上最高のミステリー&スリラー本」オールタイム・ベスト100に選出されるなど、海外での知名度も高い。 無人島に招待された登場人物たちが次々と殺されていく展開は、“ミステリの女王”アガサ・クリスティの名作「そして誰もいなくなった」にオマージュを捧げたものであり、タイトルは綾辻が少年時代に心酔した江戸川乱歩の「三角館の恐怖」にちなんだものとなっている。 ミステリ好きの心を刺激する要素が惜しみなく散りばめてあるのが、綾辻行人のデビュー作「十角館の殺人」だ。デビュー作には作家のすべてが詰まっていると言われるが、「十角館の殺人」こそまさにそのとおりの作品である。