台湾の複雑なアイデンティティ「国」なのか、それとも…?いま知っておきたい台湾の基本
台湾問題が国際的な関心事となり、日本においても大きな注目を集めています。とはいえ、台湾に関してはなにかと「難しいこと」「わかりにくいこと」が多いのも事実ではないでしょうか? しかしそれでも、難しいことがたまらなくおもしろいといい切るのは、『台湾の本音』(野嶋 剛 著、光文社新書)の著者。台湾に関わり始めてから20年になるというジャーナリストですが、10冊以上の関連書籍を書いてもなお、台湾にはわからないことが多いというのです。 台湾については、既説書で『台湾とは何か』(ちくま新書)という本を書いたことがあります。2016年に出版され、いまも版を重ねています。 しかし、それから7年が経ち、台湾にもいろいろな変化が起きました。そして、それよりも大きかったのは中国が変わったことです。 習近平国家主席の絶対権力化が進み、中国がかつて期待されたような「開かれて、自由で、民主的な国」へ変わっていくことはほぼ絶望的になりました。 豊かにはなったものの、隣国として安心して付き合える国ではなくなってしまった。アメリカは、中国への「コミットメント(関与)」を掲げ、ある意味では日本以上に中国との付き合いに前のめりでしたが、今や中国を戦略的競争相手とみなし、経済デカップリングを仕掛けています。そんな新冷戦とも呼ばれる米中の対立関係が鮮明になりました。(「まえがき」より) その結果として台湾に、中国からの政治的・軍事的圧力と、アメリカからの政治的・軍事的関与が同時に注がれることになったのはご存知のとおり。いい例が2022年8月のナンシー・ペロシ下院議長(当時)の訪台と、それに対する中国の軍事演習です。 その際には中国のミサイルが日本の排他的経済水域に撃ち込まれたため、「台湾有事は日本有事」というキーワードとともに、日本が台湾と中国との戦争に巻き込まれるリスク認識が多くの人に広まることになりました。 そこからもわかるとおり、この7年を振り返ってみても、台湾については新たな情報をたくさんインプットする必要が生じたわけです。そこで本書では、変わり続ける台湾についての課題に対する「解」をわかりやすく示しているのです。 しかし、そもそも台湾は「国」なのでしょうか? ここでは多くの人が疑問に関しているであろう(けれど人には聞きにくくもある)、この基本的な疑問を解消すべく、ずばり「台湾は『国』なのか」というタイトルがつけられた第1章に焦点を当ててみましょう。