台湾の複雑なアイデンティティ「国」なのか、それとも…?いま知っておきたい台湾の基本
台湾なのか、中華民国なのか
ところで台湾を語る際には、「台湾なのか、中華民国なのか、いったいどっちなの?」という疑問が生じることになるかもしれません。したがって著者は、この点についても言及しています。少し長くなりますが引用しておきましょう。 中華民国は民族主義(民族独立)、民権主義、民生主義という三民主義を唱えた反清朝勢力が辛亥革命を起こし、翌年の1月1日に孫文を臨時大統領にした臨時政府から始まりました。孫文は1919年に中国国民党を設立します。 清朝に続く正統政権として、その後は蒋介石がリーダーとなって中華民国を統治していきました。1945年に第二次世界大戦が終結すると、日本がそれまで統治していた台湾は連合軍の一員として中華民国が「接収」します。 しかし、その後に起こった中国共産党との国共内戦で、蒋介石を中心とした中華民国の国民政府──中国国民党は、1949年に台湾へ逃れました。一方、大陸に残った中国共産党は、中華人民共和国を設立します。この国共内戦は、まだ終結したわけではありません。 中国は台湾も自分たちの国の一部であると主張していますし、逆に中華民国も、自分たちが中国大陸も支配することができる政権であると憲法で位置づけています。(22~23ページより) つまり台湾海峡を挟んで、中華人民共和国という政治実体と、中華民国という政治実体がいまなお戦っている構図が残っているということ。台湾問題を中国や台湾が「両岸問題」と呼ぶのはこのためです。いわば「未完の内戦」であり、その構図をまず知っておかないと、台湾問題はなかなか理解できないわけです。(22ページより) 台湾の歴史から中国との関係性、「親日」といわれる根拠、そして「台湾有事」に関する問題など、変わり続ける台湾について知っておきたいことが網羅された一冊。未来にあるべき日本との関係性を見据えるためにも、ぜひ読んでおきたいところです。 >>Kindle unlimited、99円で2カ月読み放題キャンペーン中! 「毎日書評」をもっと読む>> 「毎日書評」をVoicyで聞く>> Source: 光文社新書
印南敦史