「“不倫は文化”と書いた新聞には感心」スキャンダルの常連男・石田純一、丸裸にされる
陣内孝則が降りる
落胆していると、信じられない情報が飛び込んできた。陣内に他局のドラマの主役の話がきたらしかった。 「陣内さんが降りたらしいって聞いて、もしかしたら(役が)くるかもしれないってずっと待ってましたが、あー、こない。もう終わりって思った。昼まで寝てたら、ぼこんって電話かかってきて、“『抱きしめたい!』の話って聞いてます?”って。 スケジュールが空いてないのに、“空いてます”と言う事務所がよくあるので、本当に空いてるかどうか俳優本人から聞いてみたっていうわけ。“オレ、本当に空いてます!”って言ったら、“じゃあやりましょう”と。え!? びっくり」 まさに果報は寝て待て。 「なんだか個人的に、ちょっと変な言い方になりますけど“人気”って言葉は、人の気と書きますよね。自分の周囲での人気運が上がってきてるなと思ってたら、つまりモテだしたら、大きな舞台でもそういうふうになるんだなっていうのが自分の印象です」 人間、生きていくなかで人知では思いも及ばない強運が降ってくることがある。 ゴールデンタイムの高視聴率番組に出ると、どんなことになるのか。 「ドラマが放送されると、街を歩けないぐらいになってました。ただし、僕の出番は4話で終わりだったんです。3話か4話でもう背中たたかれて、お疲れさま。オレ、終わったと思ってたら、当時って『番組に関するご意見をお寄せください』みたいなお知らせが番組最後にあったじゃないですか。そしたら、僕の役名が二宮修治っていうんですけど、“あの人は誰?”“二宮修治、もっと見たいです”とか“もう消えてっちゃうんですか。もっと見たい!”とか、手紙がかなり来たというんです」 浅野温子への手紙の次、2番目が石田へのものだった。 時代の波が石田純一を本流に押し上げた。
今井美樹ととことん話し合った『想い出にかわるまで』
ドラマの出演依頼が殺到した。TBSからは局の看板である夜10時、金曜ドラマの1月からの新番組が打診された。1990年の『想い出にかわるまで』だ。 石田は東大卒のエリート商社の社員役。2か月後に結婚を控えている、婚約者役は今井美樹。東京・西早稲田の製版所経営者の長女。次女役は松下由樹。 今井と石田の2人はこのまま幸福に結婚し、ゆくゆくは今井の父役・伊東四朗の製版所を石田が継ぐ、という人生設計を描いていた。東京湾の水質を気にする環境活動家の水中カメラマン役に、チューリップの財津和夫。 今井を知ると急速に接近し、「言ったろ。好きになりそうだって」と強引なセリフを本人に吐く。何の疑問もなく結婚に向かっていたはずの今井だったが、あまりにも幸福すぎる日々にふと迷いが生じる。 婚約者の石田とは異なる価値観の男の存在が大きくなっていく。 キーパーソンとなっていくのは今井の妹だった。以前からひそかに姉の婚約者に恋心を抱いていたのだ。姉が結婚をしばらく延期したい、と言い出したことで、人間関係が軋んでいく。 姉の婚約一時白紙状態を好機ととらえ、妹は石田に熱烈アタックする。気の迷いと優しさで、石田は妹と関係を持ってしまう。 石田と今井のすれ違いの距離が広がり、ついには婚約解消。だが、どちらも好きであることに変わりはない。すれ違いに終止符を打とうと、夜のビル街で2人は走り寄って抱き合う。ところが妹の存在が大きくのしかかり、妊娠までしたことで、石田は苦渋の選択で松下と結婚する。本作は、現在でも恋愛トラウマドラマと語りつがれているほど、強烈な印象を残した。 このドラマ、傑作である。 止められない恋愛感情、あざといまでの引きの強さとどんでん返し。夜の街で一度は別れたはずの石田と今井が駆け寄り、抱き合うシーンで不覚にも落涙してしまった。まさか34年前のトレンディードラマで泣かされるとは。 「忘れられないのは今井美樹さんが6時間のワンシーン、ずっと泣きっぱなしだったこと。やっぱり芝居はもう全身全霊だから、感情移入がすごい。あのドラマ、(脚本家の)内館牧子さんの本格的デビュー作なんですよ。シーンによっては、2人のアドリブでやってくださいってときもあったんです。あるシーンは全部アドリブでした。つくらずに思ったことを言う。“オレにとっては君が夢なんだよ!”あんな言葉もバンバン出てきちゃう。台本がすごくよくできてるなと思いました。真夜中に今井さんとオレと遠藤環プロデューサーの3人で何度もセリフを確認したりしてね」 製版所のロケ地は見覚えがあった。長い石段はなんと、私の家のすぐ近く、都電と神田川が並行するあたりだ。ちなみのこの石段、1974年に公開された南こうせつとかぐや姫の大ヒット曲が原作になった映画『神田川』にも登場する。主演した草刈正雄と関根(高橋)恵子が同棲するアパートがこの石段の隣だった。 昭和と平成、2代にわたり時代を象徴する色男がこの石段を上り下りしたわけだ。