全日本珠算選手権大会、山口県代表の東京大学院生が県勢歴代最高の17位…そろばん種目でも暗算で特訓
京都市で8月に開催された国内最高峰のそろばん大会「全日本珠算選手権大会」の個人総合競技に山口県代表として出場した渡部冬馬さん(24)は、県勢歴代最高位となる17位入賞を果たした。強豪がひしめく中、能力の限界に挑み、小学校時代からの夢をかなえた。 【写真】全日本珠算選手権大会に臨む選手たち(8月8日、京都市で)
初挑戦は小学5年
同県宇部市で生まれ育ち、現在は東大大学院情報理工学系研究科2年に在学中。そろばんとの出会いは幼稚園の年長組の時だった。友達の姉が玉をはじく様子を見て「面白そう」と興味を持った。元々、かけ算の九九のおもちゃに熱中するほどの“数字好き”。両親にそろばんを買ってもらい、自宅近くの教室に通うと才能が開花した。
同大会への初挑戦は、すでに段位を取得していた小学5年の時。緊張感もあり、いい結果は出せなかった中、ある光景が目に焼き付いた。「そろばん」「暗算」の両種目の総合得点を競う「個人総合競技」で、1500点満点中1480点以上を記録した人たちが起立して紹介され、尊敬と羨望のまなざしを集めた。
「いつか自分も肩を並べたい」。そんな思いを胸に毎年、同大会に挑み、徐々に点数を伸ばした。しかし、中学、高校時代は野球部の練習に明け暮れ、そろばんに触れる機会は減少。大学1年になった2019年には「これで最後に」と心に決めて出場した。
すると100位入賞まであと十数点の成績を収め、「初入賞を果たしたい」と意欲が再燃。20年に入り、コロナ禍で大学の講義がオンラインで行われ、野球やそろばんのサークルも活動休止になる中、個人練習に時間を費やした。
パソコンでプログラムを組んで問題を自作。毎日約1000問を解き、計算速度と正確性の向上を図った。速度アップのために取り組んだのが「そろばん種目でも玉をはじかずに暗算で解く」手法。そろばんサークル仲間から「時間を短縮できる」と教わった。
答えを書き出しながら計算
暗算は4桁と4桁のかけ算はできていたが、5桁になると答えを覚えるのが難しく、書く手が鈍った。それでも「1480点以上」と「入賞」を目標に、同大会が中止になった20年、21年と特訓を続け、「答えを書き出しながら計算する」スタイルも体得した。