最低賃金の引き上げで人材流出防げるか…全国最大上げ幅84円の徳島、知事「地域間競争勝つため」
地元に残る?
新しい最低賃金は各都道府県で10月から、徳島では今月から適用された。しかし、引き上げで人材流出を防げるかどうかは不透明だ。 徳島県板野町の「道の駅いたの」でアルバイトをする専門学校生(20)は9月から時給が上がった。「賃金アップは地元に残る理由の一つになる」としつつ、「都会にも魅力を感じるので、将来は県外に出ることも考えている」と明かす。 地元企業には混乱も残る。 県が9月に県内113事業者を対象に行った緊急アンケートでは、84%が「経営に影響する」と回答した。 「ホテルサンルート徳島」の竹原敬子支配人(41)は「人材流出を食い止め、県外に出た人が戻ってくることを期待したいが、実際にどう動くかはわからないところがある」と話した。
引き上げ合戦が過熱…「いたちごっこ」懸念の声も
徳島県の大幅引き上げは、他県にも波紋を広げている。 隣接する高知県は、昨年度は徳島より最低賃金が1円高かったが、今年度は28円下回る結果となった。 徳島、高知両県境でスーパー3店舗を展開する「室戸ショッピングセンター」(高知県室戸市)は、徳島に合わせ、高知側の時給も引き上げた。年間人件費は2000万円以上増えるが、担当者は「人手不足で安定した雇用を続けるためだ」と説明する。 昨年度まで四国トップだった香川県は徳島を10円下回った。香川県労働政策課の担当者は「徳島の引き上げ方は異例で驚いた」とし、「来年度は徳島の引き上げを踏まえた議論がなされる可能性はある」と話した。 過熱する引き上げ合戦に懸念の声も出ている。 昨年度も最後に決まった佐賀県が、目安比の上げ幅がプラス8円と全国最大だった。 秋田県は昨年度は目安比プラス5円、今年度は同4円と、目安を上回る引き上げを決めたが、それでも今年度は最下位に沈んだ。佐竹敬久知事は9月の記者会見で、後から決定する県の引き上げ額が他県を上回る状況を「いたちごっこ」だと表現し、「競争でいいのか」と疑問を呈した。
各地の状況で決定を
安部由起子・北海道大教授(労働経済学)の話 「最低賃金は本来、各地の経済状況に基づいて決定すべきものだが、現状は他県より下位になることを避けるために様子見する引き上げ合戦になっている。地方から都市への人の流出には様々な要因があり、最低賃金の引き上げだけで食い止めることは難しいだろう。徳島でどのような影響が出るのか注目される」