音楽ファン垂涎のレコード店、ホテル、ディープなカルチャースポット巡り【オースティン音楽旅行記Vol.3】
Hotel Van Zandt:音楽愛が伝わる理想的なホテル
このオースティン編でも、音楽好きにお勧めのホテルを紹介しよう。今回宿泊したHotel Van Zandtは、不遇の生涯と切ない歌声で知られるアウトロー・カントリーの桂冠詩人、タウンズ・ヴァン・ザントにインスパイアされて2015年に創業した。 ロビーからさっそくロックンロールな趣向を凝らしている。フレンチホルンを模したシャンデリア、美しい木目、房状のカーペット、フロントでふるまわれるマルガリータなど、どこを切っても「ライブ音楽の首都」にふさわしい。 16階建てのホテルは街の景色に溶け込み、グレーとダークブルーを基調とした客室には、オースティンらしく古風なテイストと洗練されたひねりが同居する。部屋の窓からレディ・バード湖が一望できるのも素敵だ。個人的に嬉しかったのはターンテーブルのレンタルサービス。ホテル側が厳選したアルバムに浸るのも、お土産の一枚をさっそく試すのもよし。 さらに4階のレストランGeraldine’sでは、地元ミュージシャンのライブを観ながら、新鮮な食材を活かしたオースティンの郷土料理を味わうことができる。シェフの腕前も一級品で、ビーツサラダ、ハリバットのポワレ、クラフトカクテルのどれも絶品だった。アメリカでの食事は油っぽくボリューミーになりがちなので、繊細な味わいを楽しめるのは貴重だ。同じく4階では、屋上プールデッキで贅沢に寛ぐこともできる。 Hotel Van Zandtはダウンタウンの中心部にあるため、主要スポットへのアクセスも良好。TREKの自転車をフロントで借りることもできるし、「小ぢんまりとした街」を探索するのに何かと便利だ。ホテルのそばには日本でいう成城石井に近い感覚のスーパーマーケットRoyal Blue Groceryもあるし、すぐ裏手のRainey Streetはバンガローを改装したバーが立ち並ぶ開放的な繁華街で、ここを飲み歩くのも大いにアリ。 個人的にはホテルの近所にあるIHOPで、起き抜けに食べたブランチの味も忘れがたい。ご存じのとおり、観光名所ではまったくない全国チェーンだが、24時間営業のありふれたファミレスこそリアルな日常が垣間見えるもの。何も起こらない時間を特別に思えるのも贅沢だったりする。眠そうな店員と早朝の静けさを尻目に、バターとシロップたっぷりの激甘パンケーキを無心で頬張りながら、残り少ないアメリカでの時間をじんわり噛み締めた。 ※【オースティン音楽旅行記】は全4記事 続きはRolling Stone Japanのウェブに掲載 ※取材協力:ブランドUSA、オースティン観光局
Toshiya Oguma