音楽ファン垂涎のレコード店、ホテル、ディープなカルチャースポット巡り【オースティン音楽旅行記Vol.3】
South Congress:カウボーイ・ファッションも揃う観光の大定番
翌日はオースティン観光の大定番、South Congressに向かった。コロラド川の南側を走るこの通りは、19世紀こそ凡庸な田舎町だったが、次第に交通の要所として栄えるように。1962年に州間高速道路35号線が開通すると、店舗や企業がそちらに流れ、しばらく荒廃の一途を辿るものの、90年代から2000年代にかけてV字復活を果たす。そして現在、アンティーク、古着屋、アートギャラリー、カフェ、レストラン、音楽ヴェニューなどが密集するSouth Congressは、SoCo(ソーコー)の呼称で絶大な支持を集めている。 こだわりの強いお店が一本道の両側に並ぶため、ノープランで街歩きしても好奇心が広がる。Jo’s Coffee、Amy’s Ice Creams、Home Slice Pizzaといった食の人気店もあるし、インスタ映えしそうな場所が盛りだくさん。シェアサイクルが路肩に設置されているので、買い物したあとは川沿いの公園までサイクリングするのもよさそうだ。スティーヴィー・レイ・ヴォーンの銅像がある公園、Auditorium Shoresまで自転車なら5分で行ける。 まずはBig Top Candy Shopへ。レトロなサーカスを思わせる内装や、キッチュで極彩色の店構えにもワクワクさせられる。目を引くのはタフィーの量り売り。フレーバーも豊富なので、いろいろ口に放り込んでみたくなる。個人的にはチョコチップクッキー味が好きだった。グミやガムボールも同様に充実している。 さらに、自家製スイーツやソーダにも力を入れており、ポッキーやハリボーといった定番から世界の珍味まで数千種類ものお菓子が並ぶ。楽しみ方は自由自在で、撮影担当の妻は「好きな日本人は見たことがない」と言われるTwizzlersで自爆していたがそれもまたよし。青髪の似合う店員の女の子が、BGMで流れるトーキング・ヘッズの「(Nothing but) Flowers」をラテンのノリで口ずさんでいたのもオースティンっぽくてよかった。 SoCo巡りでもう一つ見逃せないのが、赤いブーツの看板が目印のAllens Boots。1977年の創業以来、家族経営を続けるウエスタンウェア専門店で、カウボーイブーツの品揃えは世界最大級の4000足以上。カスタムブーツも製作可能で、ハット、ジーンズや衣類/アクセサリーも取り扱い、エアロスミスやギレルモ・デル・トロといった大御所も足を運ぶ。 革の香りが漂う店内いっぱいに、上質なウエスタンブーツがずらりと並ぶ。これぞテキサスと言わんばかりの光景。つま先やヒール、ハート型の履き口、刺繍や装飾など一足ずつ確かめながら、クラフトマンシップの極みを堪能しよう。『クィア・アイ』シーズン6「男やもめの変身劇」にはAllens Bootsでブーツを試着する一幕があり、タン・フランスが言うところの「いい気分になれるセクシーな装い」がここなら手に入る。 近年はカントリー音楽がメインストリームで躍進していることもあり、ウエスタンスタイルが旬のトレンドとして脚光を集めている。Vogueは2024年を「カウボーイの年」と定義し、ビヨンセが『COWBOY CARTER』を発表した際にはカウボーイハットへの関心が前年比400%も増加。セレブの愛好家も枚挙にいとまがない。 そんな背景も後押しとなり、Allens Bootsに迫る勢いなのがTecovas。2015年創業のブーツブランドは全米35店舗を展開。デジタルネイティブ世代ならではの価値観でモダンスタイルを追求し、履き心地のよい逸品をリーズナブルな価格で提供する。SoCoの旗艦店も洗練されつつカジュアルな雰囲気で、自分のような一見さんも気軽に入りやすい。 SoCoはミュージシャンに愛されてきた地域でもある。1955年創業のContinental Clubは伝統ある老舗で、ロック、ジャズ、ブルース、アメリカーナなどの一流が出入りし、300人程度のキャパながらスティーヴィー・レイ・ヴォーンや、近年ではロバート・プラントやレオン・ブリッジズも登場。同店のオーナーが2014年に立ち上げたC-Boy’s Heart & Soulも、ソウル/R&Bに軸足を置く人気店だ。 「日本のジャズ喫茶をテキサス流に解釈すること」をコンセプトとするレコードバー、Equipment Roomも気になる。ハイファイな音響設備やスタイリッシュな内装に加えて、日本のお酒も扱いカクテルの評判も上々。オースティンの有名レコード店Breakaway Recordsとともに、一枚のアルバムを解説付きでフル試聴するイベント「OMAKASE VINYL」も開催している。今回は都合がつかなかったがぜひ行ってみたい。