今年もまた熱戦が…夏の甲子園「伝説の決勝戦」 80年代以降の“ベストゲーム3選”
夏の甲子園もいよいよ大詰め。今年も熱戦を勝ち抜いた2チームが深紅の優勝旗をかけて決勝戦で激突する。過去にも数多くの名勝負が繰り広げられた頂上決戦の中から、1980年代以降のベストスリーを選んでみた。【久保田龍雄/ライター】 【写真を見る】「小芝風花」16歳当時の笑顔が初々しすぎる 歴代「センバツ応援イメージキャラクター」の爽やかな笑顔 ***
第3位 「PL学園」対「宇部商」(1985年)
まず第3位は、1985年のPL学園対宇部商を選んだ。 桑田真澄、清原和博のKKコンビを擁し、“横綱相撲”で勝ち上がったPLに対し、宇部商は準々決勝、準決勝と2試合続けて鮮やかな逆転勝ち。“ミラクル宇部商”の異名をとり、主砲・藤井進は準決勝までに大会トップの4本塁打を記録していた。 PLの先発・桑田は4連投とあって、疲労も限界に達し、試合前、「何とか3点までに抑えるから4点は頼む」とナインに頭を下げた。 一方、宇部商は準々決勝、準決勝で好救援を見せ、ミラクルを呼び込んだ背番号11の古谷友宏が初先発のマウンドに上がった。 2回、宇部商は四球を足場に犠飛で1点を挙げ、先手を取る。これに対し、PLも前日の試合で右足ふくらはぎを痛めながらもテーピングで出場した清原が、4回に藤井と並ぶ4号同点ソロを放ち、5回にも内匠政博のタイムリーで2対1と勝ち越した。だが、宇部商も6回に藤井のタイムリー三塁打と犠飛で3対2と再びリードを奪う。 その裏、“常勝PL”のベンチに重苦しい空気が漂うなか、清原がバックスクリーン左に2打席連続の同点ソロを放ち、再び流れを引き寄せる。朝日放送・植草貞夫アナが「甲子園は清原のためにあるのか!」と絶叫したのも、このときである。 そして、3対3の9回裏、PLは2死二塁、3番・松山秀明が右中間を抜く執念のサヨナラタイムリー。勝利の瞬間、桑田も清原も涙を流して喜びを爆発させ、歓喜の輪の中で清原が愛用のバットを傷つけまいと右手で空中高く掲げている姿も印象深かった。 初戦の東海大山形戦で29得点を記録し、OBの西武・金森栄治も「可愛げがないほど強過ぎる」と評した異次元の強さが一部のファンの反感を買ったPLだが、決勝戦の劇的幕切れを見て、初めて共感を覚えた“アンチ”も少なくなかったといわれる。