【アメリカから見たTPP(3)】日本車が洪水のように流入する?米国民の懸念
「アメリカの真の要求は日本の規制緩和だった」
またデイビス教授は、アメリカの交渉での関心は関税より、他の規制基準緩和にあったのではないかと推測する。「アメリカにとって本当の焦点は、日本国内の規制基準をどのように変えて、アメリカの自動車に対して、日本市場に浸透する平等な機会が与えられていると考えられるかどうかです。そのため、今回の交渉でのアメリカの日本に対する要求の焦点は、いかにして平等な機会を得られるかという点だったのだろうと考えています」 しかし日本政府は、例えば環境と安全に関し、「日米両国は国際的な基準を一致させるために協力するものの、日本側の基準は一切引き下げない」と発表している。 デイビス教授は「アメリカの自動車会社の一部は、TPPが日本の自動車市場へのアクセスを拡大させるものだと考えておらず、TPPに反対しています。むしろ、この協定でより多くの日本車がアメリカに流入することを心配しています」と述べた。 TPPは世界経済の40%を占め、世界の産業や貿易体制に大きな影響を与えるだろう。しかし一方で、既存の国際貿易体制として、WTO(世界貿易機関)がある。TPP設立で、WTOの意義は薄れるのだろうか。 (次回に続く) ◇クリスティーナ・デイビス教授 米プリンストン大政治学部、ウッドロー・ウィルソン国際公共政策大学院兼任教授。国際関係論と比較政治学の研究を行い、貿易政策が専門。日本、東アジア、EU、国際機関の政策や外交について研究している。「 Food Fights Over Free Trade: How International Institutions Promote Agricultural Trade Liberalization」「Why Adjudicate? Enforcing Trade Rules in the WTO」(大平正芳記念賞)などの著書がある。 (聞き手・文:Matthew Kolasa、翻訳・構成:中野宏一/THE EAST TIMES)