いわゆる多重人格、悪夢、赤ちゃん返り……子どものトラウマのさまざまな現れ方
つらすぎるトラウマ体験から心を守るための「解離」
衝撃的な体験は「解離」といわれる状態を引き起こすことがあります。解離とはどういう現象のことでしょうか? 心身の状態はそのときどきで違いますが、通常は「今」「私」という意識でつらぬかれ、つながることで一つのまとまった人格として体験されています。解離は、ある特定の状態が他の状態とうまくつながらなくなる現象ととらえられます。 解離は、つらすぎる体験から心を守るしくみであり、幅広い症状を示します。子どもは大人より解離を起こしやすく、その現れ方も複雑なものになりがちです。なぜなのでしょうか。 生まれたばかりの頃は、眠る、起きる、泣くといった数少ない状態しかありません。機嫌よく笑っていたと思ったら、突然泣き出すといったように、ある状態とある状態との間に連続性がありません。 それが成長とともに、状態と状態の隙間は埋められ、それぞれの状態をなめらかに移行でき、そのすべてが自分だと思える「まとまりのある自分」になっていきます。しかし、子どもはさまざまな状態がつながる途中の段階にあるため、解離が起こりやすいと考えられます。 虐待されたり命にかかわる目に遭ったりしたとき、子どもが自分の身を守るためにできることは限られています。その場その場に適した状態を保とうとする、精いっぱいの防衛策として解離が起こるという見方もできます。 そんな解離の現れかもしれないとされていることの一つに、「イマジナリーフレンド=想像上のお友だち」の存在があります。それは、子どもの空想する力と深く関係しており、さまざまな状態どうしのつながりがゆるいがゆえに、特定の状態を「自分」とは別の存在として感じられることがある、と考えれば理解しやすいでしょう。 「よいお友だち」として支えになることもありますが、トラウマやネガティブな体験を取り入れたイマジナリーフレンドは、解離性幻聴を引き起こしたり、危険なことをそそのかす「悪い友だち」になったりすることもあるので注意が必要です。