業界1位の座を支えるドミナント戦略、セブン-イレブン独自の「高密度集中出店方式」とは?
■「江東区から一歩も出るな」 では、いつから日本のセブン-イレブンのドミナント化は始まったのか。 現在の同社の勢いから考えると、しっかり練られたうえでの戦略と思うかもしれませんが、実のところ、必要に迫られて始まったといわれています。 1号店は順調にスタートを切りました。予想以上の数字をあげていたといわれています。しかし、それもしばらくするとたいへんな事態が発生してしまいます。売れ筋商品が品切れを起こす一方で、倉庫は在庫の山になり、店舗運営そのものが回らなくなってしまったのです。 その要因となったのが、商品の供給元である問屋の商慣習です。 当時の問屋は一定量以上の注文がまとまらないと商品を配送しないのが一般的であり、店舗で売れ筋商品を補充しようとしたら、動きの悪い商品も含めた必要以上のボリュームを注文しなければならず、その結果、在庫も膨らんでいったのです。 この事態を早急に解決しなければ、今後のフランチャイズ展開にも影響が出ます。あれこれ悩んだ末に考え出されたのが、複数の店舗分の注文をまとめて一定数量以上にすれば、問屋も対応してくれるのではないか、というものでした。「江東区から一歩も出るな」というセブン-イレブン・ジャパンの創業者、鈴木敏文氏(当時社長)の有名な言葉は、その際に発せられたものです。 この新規店舗開発の方針のもと、江東区内に集中してフランチャイズ店を募り、亀戸、森下、住吉、毛利、北砂、東砂、扇橋など、計11店舗を出店した段階で、取引のある問屋側も納得し、従来の商慣習にはなかった小口配送が実現することになります。以降、出店地域を絞り、集中出店していくスタイルはさらなる進化を続けながら、日本のセブン-イレブン独自の出店戦略として浸透していきます。
角井 亮一