今季開幕。男子100mで桐生に続く9秒台ラッシュは起きるのか
世界王者・ガトリンを相手に日本勢がどんな戦いを見せるのか。 すでに9秒台の呪縛から解放された桐生が、「もう10秒台では会場は沸かない」と言えば、山縣も「9秒8台を出したい。自分の力だけでなくて、いろんな条件が揃う必要はありますが、チャンスはあると思っています」と9秒台への意欲は十分。山縣にとっては、昨年10秒00(+0.2)を出したときと同じヤンマースタジアム長居が舞台になる。条件に恵まれれば、桐生の持つ日本記録(9秒98)だけでなく、9秒8台も届かないタイムではないだろう。また大会の冠スポンサーを所属企業が務めていることを考えると、日本人トップは譲れない。 昨季は0.18秒も自己ベストを短縮するなど、シンデレラボーイとなった多田は学生最後のシーズンを迎える。2月には米国・テキサス州と豪州・ゴールドコーストでトレーニングを行い、筋力もアップしたという。今季はすでに4レースをこなしており、3月29日の奈良市記録会は1本目が10秒42(-2.4)。2本目は抜群の飛び出しを見せたが、20mほど走ったところで計測器の故障が判明。直後の再レースで10秒29(-0.8)をマークした。5月10日からの関西インカレを経て、9秒台にチャレンジする。 トップ5が集結するのは、6月22~24日の日本選手権になりそうだ。サニブラウンは昨秋に米国・フロリダ大に進学。3月30日のフロリダ・リレーを10秒46(+1.4)で走っている。今季は米国の学生シーズンをこなすことを重視しており、日本選手権まで国内レースの予定はない。6月上旬の全米学生選手権を経て、前回王者として日本選手権に臨む。それから7月中旬のU20世界選手権(フィンランド・タンペレ)で100mと200mのスプリント2冠を目指す。 今夏は世界大会の開催はないものの、インドネシア・ジャカルタでアジア大会が行われる。各種目の日本代表は「2枠」。トップ5を軸に優勝争い、日本代表争いは熾烈を極める。過去最高レベルの決戦が、どんなドラマを生み出すのか。コンディションに恵まれれば、複数人が9秒台で駆け抜けてもおかしくない。2020年東京五輪に向けて、日本の男子100mはますます面白くなる。 (文責・酒井政人/スポーツライター)