「小さい頃に遊んだおもちゃ」に再びハマる大人が増えている…その予想外の「功罪」があった
少子化が進むなか、「2023年度国内玩具市場規模データ」(日本玩具協会)によると、昨年度の国内玩具市場規模は初めて1兆円を超えた。これには「キダルト」が大きく関係しているのかもしれない。キダルトとは「kid(キッド)」と「adult(アダルト)」を組み合わせた造語で、“子どものような趣味を持つ大人”、“子ども心を持ち続ける大人”の意味。玩具業界ではキダルト向けの商品の生産拡大が続いているのである。 【写真】小さい頃に遊んだおもちゃに再びハマる大人が増えている…その予想外の功罪 なぜいま、キダルト市場が拡大しているのか。今回はその実情について、おもちゃ開発者でありクリエイターの株式会社ウサギ代表取締役・高橋晋平氏に話を伺った。(以下、「」内は高橋氏のコメント) 記事前編は【ポケモン、たまごっち、シルバニア…いま「自分用」におもちゃを買う大人が急増、その「納得の理由」】から。
市場拡大は日本や韓国で顕著
ニュースサイト「Business Insider」が11月19日に配信した記事によると、キダルト市場の成長は世界的な現象であるが、特に日本や韓国といったアジアで顕著に見られる傾向だと、調査会社サカーナのグローバル・トイズ・インダストリー・アナリストのフレデリック・トゥット氏は語ったそうだ。 キダルトの市場拡大は日本や韓国などのアジアで顕著な理由とは? 「日本ではやはり、リバイバルブームが大きく影響しているでしょう。一方、韓国では国をあげてエンタメ産業を支援する動きが大きいことが要因ではないでしょうか。これは推測ですが、海外展開を考えるうえで、両国ともまずは近い文化圏のほうがコンテンツを展開しやすいと考え、日本と韓国、両国で文化を高め合う動きがあるのかもしれません。 現在、日本では韓国のアイドルグループなどのK-POPが流行しています。かたや韓国では、アニメ『クレヨンしんちゃん』が1999年に初放送されて以来、幅広い世代から人気を集めていたり、近年サンリオキャラクターが若い女性層で人気だったりと、韓国内でも日本のカルチャーが人気なんです。このように隣国の影響を受け合うこともキダルトの市場拡大に繋がっているのではないでしょうか」 日本や韓国を中心に世界規模で拡大しているキダルト市場。しかしキダルトという用語が生まれるずっと以前から、キダルトの精神を体現している企業があるのだという。 「ピクサー・アニメーション・スタジオです。ピクサーはもともと“作り手側が、子どものために商品を作るのではなく、自分たち大人が楽しめる商品を作る”ことを目指していますからね。『トイストーリー』シリーズなど日本でも大人気の作品が数多くありますが、ピクサーはクリエイターである自分たちが楽しめる作品を追求しているんです。具体的な制作作業に入る前に、その映画に登場するキャラのフィギュアやミニチュアを作成して、作品を構想するというのも有名な話。そういったピクサーが大事にしているマインドこそ、“子ども心を持ち続ける大人”というキダルトそのものでしょう」