綺麗なオフィス内に突然卓球場? 大宗クラブが繋ぐ石川県の卓球史
「会社の名を背負うからには」
ちょうどその頃、大西会長の孫たちが卓球を始めていた。一般男女の“夢の跡”の卓球場を、娘夫婦が子どもたちの指導で使うようになった。 やがて地域の子どもたちも通うようになり、大宗卓球場はオフィスの中に存在したまま、子どもたちの元気な声が飛び交う、大宗ジュニアクラブと変わった。 遊学館高校卓球部OBで大宗卓球部最後の一年を選手として過ごした渡会純さんが、大西会長の娘・麻衣子さんと結婚、現在も大宗株式会社の営業担当取締役として社業に邁進するのも、大宗卓球部からの伝統だ。 「ジュニアとはいえ、会社の名前を背負い、その恵まれた環境を使わせてもらうのだから、社員や地域の方には常に挨拶や感謝の気持ちを忘れないように指導しています」 企業卓球部から地域のジュニアクラブへ、「大宗」という場所は、今も石川県の卓球選手たちの夢を育てている。
大宗クラブからは4人が全日本ホカバへ
さて、その大宗クラブの全農杯全日本ホカバ石川県予選会はどうだったのだろうか。 「力を出せた子と、もう少し頑張れたなという子が半々くらいですね」と振り返りつつ、「嬉しかったのは、大宗クラブの中学生が応援に来てくれたこと」と渡会純さんは顔を綻ばせる。 「朝から中学生のエースの子が練習相手に来てくれて。中学生女子も4、5人応援に来て、父兄の方々と一緒に応援してくれたのが子どもたちの力になったと思います」 “それぞれの個性を生かした指導を心がけている”という夫婦の方針通り、各年代の子どもたちが元気よくプレーし、4人が全農杯全日本ホカバへの駒を進めた。
“我慢”を覚えるための日課
その大宗クラブから、カブ女子の部1位となった渡会梛都(わたらいなつ)が、副賞のお肉を家族で食べる夕食にお邪魔した。 渡会純・麻衣子夫婦の次女である椰都は、全日本バンビ女子の部でベスト16の実績を持つ、回転をかける感覚にセンスを感じる、小学4年生の女子だ。 いまの課題は「試合中に怒らないこと」。 我慢を覚えるために、朝は布団たたみ、学校から帰ってきたら玄関の掃除を毎日の日課にし、勉強では公文にも通い始めた。発案者の麻衣子さんも、娘の「勝ちたい」と「楽しい」の違いを本人に伝えようと苦心している。 「卓球と一見関係のない習慣でも、勝ちたかったら、我慢もしないといけない、苦しいこともしないといけない。強制的にやらせるだけも好きじゃないので、本人にわかってほしくて」