アングル:エヌビディア、供給制約がネックに AIブームは継続
Stephen Nellis Aditya Soni [サンフランシスコ/ベンガルール 21日 ロイター] - 米半導体大手エヌビディアが20日発表した第4・四半期(11─1月)の売上高見通しは、一部の市場関係者の高い期待に届かず、人工知能(AI)ブームの陰りを懸念する声も出ているが、同社の幹部、アナリスト、投資家によれば、それは全くの杞憂に過ぎない。 エヌビディアの高性能半導体を利用して新たなAIシステムを構築したい企業は山ほど存在し、エヌビディアの販売ペースは製造委託先の台湾積体電路製造(TSMC)の生産ペースと一致している。 エヌビディアが20日発表した11─1月の増収率予想は7四半期ぶりの低水準となり、時間外取引で株価が2.5%下落した。 同社はサプライチェーン(供給網)の制約により、2026年度の数四半期にわたって半導体需要が供給を上回るとの見通しを示した。製造工程が複雑なことに加え、今年夏に一部製品で不具合が見つかったことが背景だ。 同社最新の主力AI半導体「ブラックウェル」は多数のチップで構成され、先進パッケージングと呼ばれる複雑な工程で接合する必要がある。 TSMCは生産能力の拡大を急いでいるが、エヌビディアなどの半導体メーカーにとっては、このパッケージングが引き続きボトルネックとなっている。 クリエイティブ・ストラテジーズのベン・バジャリン最高経営責任者(CEO)は「ブラックウェルは従来品よりTSMCによる高度なパッケージングが増えるため、しわ寄せがいく」とし、25年を通じて需要が供給を上回るとの見通しを示した。 これに加え、エヌビディアのミスが問題を悪化させた。 ブラックウェルに設計上の不具合があり、エヌビディアは「マスク変更」と呼ばれる作業を強いられた。ジェンスン・フアンCEOは、この不具合でブラックウェルの生産歩留まりが一時低下したと述べた。 エヌビディアはこの不具合について詳細を一切明らかにしていないが、ブラックウェルのような複雑な半導体は何百もの製造工程を必要とするため、製造に数カ月かかることもある。こうした工程の多くでは、一連の複雑なマスクを通して紫外線を投射し、設計回路をシリコンウエハーに投影する。 アナリストは、このマスクの変更でエヌビディアの生産スケジュールが遅れ、コストが発生したようだと分析している。 ランニング・ポイント・キャピタルのマイケル・シュルマン最高投資責任者(CIO)は「ボトルネックは改善するどころか悪化するリスクがあり、売上高予想に悪影響を及ぼす恐れがある」と述べた。 エヌビディアの幹部は投資家との電話会議で、新型半導体のサンプルを約1万3000個出荷しており、今四半期の販売が数十億ドル相当という当初予想を上回るとの見通しを示した。 フアン氏は20日、ロイターに「現在、増産の初期段階にあり、歩留まりが改善するチャンスが常に存在する」と説明し、「ブラックウェルの生産をゼロから極めて大規模な水準まで拡大する。当然のことながら、物理法則では増産ペースに制約も存在する」と述べた。 増産は短期的には粗利益率を圧迫するとみられている。エヌビディアの幹部は、生産上の問題が解決するまで、同社の利益率が数%ポイント低下し70%台前半になると投資家に警告した。 エヌビディア株を保有するガベリ・ファンズのポートフォリオマネジャー、ヘンディ・スサント氏は、エヌビディアの半導体に対する需要が当面「確実に並外れて強い」ことは間違いないとし、「重要なのは供給だ。エヌビディアがどれだけ供給できるかだ」と述べた。