パリオリンピック男子バレー 敗れたアルゼンチン主将が最も高く評価した日本人選手は?
【関田がスパイカーを自由自在に操っていた】 日本のブロックタッチをめぐってビデオ判定になったが、その映像を見ても、アルゼンチンサイドは「触っている」という見解だった。負けず嫌いの塊のようなアルゼンチン人たちは承服できず、猛烈に抗議を続けた。その結果、判定は覆らずにイエローカード、さらにはレッドカードが与えられて21-20に。このセットで初めて日本にリードを許したのだ。 「起こるべきではないことが起こってしまった。正直、受け入れることはできなかったよ。言いたいことはあるが......大事なことは、我々アルゼンチンが3セット目をとって、4セット目も団結して戦い、あと一歩まで迫ったことだろう」 デ・セッコはキャプテンらしく、それ以上は弁解しなかった。最後に、アルゼンチンの主将が一番、高く評価した日本人選手は誰だったのかを聞いた。 「関田(誠大)のプレーの組み立ては、正直に言って最高にすばらしかったと思う。我々も、そこの対応は苦労した。関田は、いつも以上に選手たちを使いこなしていたのではないか。チームとしての戦術的なプラニングもあるのだろうが、石川(祐希)、髙橋(藍)、西田(有志)などのスパイカーを自由自在に操っていた」 アルゼンチンとしては、関田の変幻自在のセットアップに的を絞れなかったのはあるだろう。その結果、なかなかブレイクすることができなかった。関田から石川だけ、というようにコンビを読みきれるなら、束になってブロックにいける。しかし、いくつもある選択肢から最善のものを選ばれるとお手上げだ。 その点、関田が試合後に話していたことは、デ・セッコの関田評と符合していた。 「ひとり(のスパイカー)に頼るのはやめよう、と思いました。それは僕の強みではない」 関田はそう振り返っていた。 「正直、勇気はいるところでしたけど、いい状態でいるなら使っていこうと。たとえば(第4セットの最後)、小野寺(太志)選手を使ってレシーブされて、僕のなかでもう一回行こうか、というのもありましたが、宮浦(健人)も強力なスパイクがある(結果的に宮浦がスパイクに成功)。今日は選択肢がたくさんありました。負けたら終わりだったんで、次につながってよかったです」
自由に解放されたトスが、アルゼンチンを打ち負かしたということか。 アルゼンチンが日本の強さを照らし出した、とも言えるだろう。彼らが執念を燃やした3セット目は、日本を強くするに違いない。ライバルとして貴重な経験を残してくれた。 「我々は敗れた。しかしバレーで大事なのは戦い続けること。その姿勢だ」 デ・セッコの言葉である。
小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki