《私の最初の晩餐》具志堅用高「食べてたら、チャンピオンにだってなれる!」 下積み時代に驚いた極上のステーキ
チャンピオンへの道を切り開いた一品
牛肉は、中学を卒業して沖縄本島の高校に通うようになってから、初めて食べたの。下宿先は、銭湯を経営している人の家でね。放課後に学校で練習したら、皆で帰ってくるでしょ。ボクシングをやっている子は下宿代がタダだったから、斧で薪割りをしたり、掃除をしたり、手伝いの合間に夕飯を食べてね。 銭湯の営業が終わったら、またボクシングの練習。これ、本当の話だからね。皆でタワシを持って、床から壁から力いっぱい掃除をするわけ。映画の『ベスト・キッド』と一緒。背中も腕もパンパン。お風呂場がきれいになったら、今度は腕立て伏せとか、シャドー。サンドバッグはボイラーの横に吊るしてあったね。 そんな毎日を過ごしていると、時折、コーチとか先輩が誘ってくれるの。「ステーキ、行くか」。ナイフとフォークを手にするのだって初めてよ。鉄板の上に、見たこともない分厚い肉で、びっくりしたさ。一口食べた、その瞬間に思ったね。「これ食べてたら、何ラウンドでも戦える。おれはチャンピオンにだってなれる!」。それぐらい驚いた。肉の味が濃いんだ。 だけど、プロボクサーを目指して上京したら、また牛肉から遠ざかったさあ。ずっととんカツ屋さんでアルバイトしていたから、たまに食べられるお肉が豚になって。そうそう、世界チャンピオンになってから、ご馳走になってびっくりしたのは北京ダック。ありゃあ、結局、鶏肉に戻ってきてしまったね(笑い)。
食べた瞬間にKOされた極上のステーキのレシピ
■ステーキ ●材料(2人分) 牛もも肉(ステーキ用1枚200g厚さ2cm)2枚 玉ねぎ1/4個、いんげん2本、冷凍フライドポテト適量 塩・こしょう各適量 牛脂またはサラダ油適量 A[トマトケチャップ大さじ2、酢大さじ1.5、ウスターソース大さじ1、タバスコ小さじ1/4] ・にんじんのグラッセ にんじん小1本(120g)、砂糖大さじ1.5、塩少量、バター5g ●作り方 【1】にんじんは皮をむき、1cm厚さの輪切りにする。鍋ににんじんとひたひたの水、砂糖、塩を入れ中火にかけ、煮立ったら弱火にして落し蓋をし、10分加熱する。にんじんがやわらかくなったら落し蓋を取り、バターを加えて、中火で鍋をゆすり水分を飛ばしながらにんじんにバターをからませる。 【2】1.5cm幅にくし形切りにした玉ねぎは炒めて、塩を少量(分量外)ふる。いんげんは塩ゆでして3等分に切る。冷凍ポテトは揚げておく。 【3】[A]の材料をすべて合わせて混ぜる。 【4】肉は冷蔵庫から出して常温にもどし、キッチンペーパーで余分な水分を拭く。焼く直前に肉の片面に塩・こしょうをふる。 【5】フライパンを熱し、牛脂(油)を入れて溶かしたら、塩・こしょうした面を下にして肉を入れ強火で1分焼く。 【6】肉のもう片面にも塩・こしょうし、裏返して強火で1分焼いたら、蓋をして弱火で1~2分焼く。 【7】肉の中心を指で押し、肉が指を押し返すような弾力があればフライパンから取り出し、【1】、【2】と器に盛り、【3】のソースを添える。 ※肉の焼き加減はミディアムレア。肉の厚みにより火の入り方も変わるため、焼き時間の調整を。 【プロフィール】 具志堅用高/1955年、沖縄県石垣市生まれ。興南高校でボクシングを始め、インターハイ・モスキート級で優勝。1976年、WBA世界ライトフライ級の王座を獲得すると、日本記録となる13回の防衛を達成する。2014年、国際ボクシング名誉の殿堂博物館で殿堂入り。 写真/菅井淳子 料理・スタイリング/柳瀬真澄 ※女性セブン2024年11月21日号