シメイの「グランドリザーブ（グランレゼルヴ）」

酔いどれ編集長のクラフトビール飲みある記（95） なじみのバーでベルギービールをよく飲んでいた時期がある。大手の国産やハイネケンといったピルスナーでは物足りなく感じ（まあそれはその時期に限らずいつものことだが）、バーのマスターにもっと重厚なビールが飲みたいとリクエストしたら、勧められたのがベルギービールだった。 マスターがまず出してきたのは、ヒューグ醸造所のビールたちだったと記憶する。「ギロチン（La　Guillotine）」（ラベルにフランス革命で盛んに用いられ、恐怖政治の象徴となった処刑用具のギロチンが描かれている）、「デリリウム・トレメンス（Delirium　Tremens）」（ラベルにピンクの象が描かれている。ピンクの象は酒に酔うと見える幻覚といわれ、ディズニーのアニメ映画「ダンボ」でもダンボが酔ってピンクの象が踊る幻覚を見るシーンがある）、「デリリウム・ノクトルム（Delirium　Nocturnum）」（デリリウム・トレメンスの10周年を記念して醸造されたもの）。この3種類はどれもボディー感が強くて気に入ったのでよく飲んでいたが、それでも「ワインでいえばフルボディーのビールが飲みたい」と思ってゆきついたのがシメイ醸造所の「ブルー（Blue）」だった。 ウィキペディアによると、シメイ醸造所はベルギーのエノー州シメイにあるトラピスト修道院、スクールモン修道院の醸造所で、トラピストビールを生産する世界13の醸造所の一つ。ベルギービールの専門店「ベルギービールJAPAN」のサイトによると、トラピストビールの中で最初に市販され、最も多く市場に出回っているトラピストビールがシメイだそうだ。ちなみにトラピストビールとは、同サイトでは＜修道院内に醸造所を持つ、トラピスト会の修道院でのみ造られるビール＞と説明しており、エールやラガーなどといったビールの分類名ではない。 シメイでは「シメイ・ブルー」のほかに「シメイ・グリーン」「シメイ・ホワイト（トリプル）」「シメイ・レッド」「シメイ・ゴールド」を醸造している。「ベルギービールJAPAN」によると、グリーンは醸造開始150年を記念して2012年に限定醸造されたビールで、＜ナッツのような香ばしさ、スパイシーなフレーバーをともなった、甘味、苦味、酸味のバランス良い味わいが豊かに広がり（中略）常にボリュームたっぷりの強いアルコールを感じるフルボディな味わい＞とある。ホワイト（トリプル）は＜ホップが効いたドライな口当たりに、酸味もあって、のどの渇きを癒すのに最適なビール＞で、レッドは＜苦味と甘味のバランスが心地よいビール＞。ゴールドは＜オレンジ、レモン、アプリコット、白桃などのフルーティーな香りがあります。オレンジのような柑橘系のフレーバーを伴った、さわやかな酸味と旨みのバランスの良いすっきりとした味わい。後に心地よい苦味が続きます＞とある。 そして、ブルー。見た目はスタウトやポーターといった黒ビールで（ウィキペディアではダークエールと分類している）、色は赤みがかったダークブラウン。いわゆる黒ビール同様、焙煎された大麦麦芽を使用しているからだろう、カラメルのような香ばしく甘い香りがする。と同時にフルーティーな香りも鼻腔をくすぐる。飲むと苦みは少なく、フルーティーな濃厚で芳醇（ほうじゅん）な味わいが口いっぱいに広がる。コクがあってまさにフルボディーだ。「胡椒（こしょう）のようなスパイシー」と表現しているサイトもある。アルコール度数は9％と高く、食中に飲むというよりは食後にビールそのものを味わって飲むビールといえる。僕が求めていたのも、まさにそうしたビールだったからハマったわけだ。