「心を読む能力」が人により異なるという衝撃事実 リーダーに不可欠なメンタライジング能力とは
言葉や行動の裏にある意図を汲み取るこの能力は信頼の源泉である(あなたが何かをするつもりだと言うとき、私はあなたが本当のことを言っていると理解する――この文章自体が3次の志向意識水準だ)。 あまりに簡単な言明でありながら、それはすでに私たちのメンタライジング能力の半分以上を要求している。 ■メンタライジング能力は人によって異なる 私たちは成人するまでにメンタライジングに慣れてしまい、それを特別なものとは考えない。ところが、同時に対処できる相手の数は人によって大きく異なる(図参照)。
おおかたの成人は、3次の志向意識水準(自分以外の2人まで対処できる)と6次の志向意識水準(自分以外の5人まで対処できる)のあいだに収まる。 能力の違いは、会話の場面で何人に対応できるか、何人の親友を持つか、どれほど複雑な文章を使うか(少なくとも、1つの文章にいくつの節を組み入れ、意味の通る文章にできるかが指標になる)、小説の醍醐味をどれだけ味わえるか、どのくらい複雑なジョークを楽しめるかに直接の影響を及ぼす。
メンタライジング能力は、複雑な議論を理解し、込み入った設計プロセスや管理構造、セールス文句、その他の日常的な事柄について考える能力にも影響するだろう。 人前で話すとき、人は聴衆のメンタライジング能力が自分と同等であると考え、一部の聴衆を混乱に陥れることがままある。 メッセージあるいはその伝え方があまりにニュアンスに富んでいたり、難解であったり、複雑であったり、あるいは逆にあまりに簡単すぎたりすると、信頼を築くことはできない。
非常に深い絆を持つグループでは、各自のメンタライジング能力が高まるため、言葉に頼るまでもないことがある。 整形外科の教授であるジャスティン・コブは、理想的な手術室では麻酔医は尋ねるまでもなく外科医の意図がわかると言う。 看護師も外科医が求めるまでもなく必要な器具を渡せる。手術の途中で確認のために一瞬でも遅れが生じると、生死にかかわる深刻な結果を招く。 それはサッカーやラグビーのノールックパスのようなものだ。選手はパスを出す相手を見るまでもなく相手がどこにいるかを予測することができる。相手が自分の意図を理解できることを知っているからだ。