甲状腺がんの「過剰診断」問題、福島県議会で議員が指摘。専門家が「2年後のお楽しみ」と発言したことも明らかに
甲状腺がんの特徴は?過剰診断とは?
ここで問題になるのが、UNSCEARも示した甲状腺がんの過剰診断だ。 甲状腺がんの過剰診断とは、一生気づかずに過ごすかもしれない無害の甲状腺がんを診断・治療することを言う。そもそも甲状腺がんは基本的に進行が遅く、死亡率は低いとされている。 UNSCEARなどは放射線被ばくと甲状腺がんの関連について認めておらず、過剰診断も指摘しているが、福島ではいまだに甲状腺検査が続いているというのが現状だ。 検査のメリットについて、福島県立医科大は「異常がないことがわかれば安心につながる」や「早期診断・早期治療で手術合併症リスクや再発のリスクを低減する可能性」などを挙げている。 しかし、「薬剤や手術など不必要な治療による体への負担」や「病気の原因や治療に関する心の不安」などのデメリットもある。 さらに、検査対象者や保護者にメリットとデメリットが十分伝わっていないことも問題となっており、県が2023年12月に発表したアンケート調査の結果によると、甲状腺検査にメリットとデメリットがあることを「知らなかった」と回答した人は、半数超の51.4%に上った(回答者3653人)。 ◇ この過剰診断の問題について、自民党の渡辺康平県議が6月26日、福島県議会6月定例会で一般質問した。 渡辺県議は冒頭、原発事故による放射線影響を把握するために始まった甲状腺検査が、健康診断のがん検診のように受けられており、本来の目的と大きくずれていると指摘。 子どもに検査を受けさせている理由について、検査対象者の保護者の約半数が「学校で検査をしているから」と県のアンケートに答えたことを挙げ、「学校検診の義務性が伴っているのではないか」と述べた。 甲状腺がんと放射線被ばくとの関連についても、「既にUNSCEARや国際がん研究機関(IARC)が否定している」とし、県民健康調査検討委員会が放射線被ばくとの関連について結論を出さないことに「医師や研究者から強い批判が出ている」と語った。 また、渡辺県議は3月22日に開かれた第22回甲状腺検査評価部会で、医師の鈴木元部会長が「どういう結果が出るか2年後のお楽しみです」と発言したことも明かし、「この発言は極めて不適切ではないか」と言葉のトーンを強めた。 同部会の議事録を見ると、鈴木部会長は「結論として被ばく線量の増加に応じて(がんの)発見率が上昇することはないのか」と聞かれた際、これから症例が増えて安定した解析になると期待しているとした上で、「まだどういう結果が出るかというのは2年後のお楽しみなんですが」と語っている。 甲状腺検査(本格検査)が2年単位で行われていることを受けての発言とみられる。 このほか、渡辺県議は「過剰診断だと県内外から厳しく指摘される中、検査継続ありきの結論を待つのではなく、県としての判断が問われている」と、県に取り組みの見直しを検討するよう求めた。 一般質問を受け、県保健福祉部の三浦爾部長は「検査は対象者の理解と同意を得て実施されることが重要」とし、「引き続き丁寧に説明し、理解の促進に努める」と回答。過剰診断に対しては具体的に言及しなかった。 また、甲状腺がんと被ばくの関連については、「部会のまとめで検査4回目までに発見されたがんと被ばくの関連は認められないが、放射線被ばくに感受性の高い、当時乳幼児だった世代への継続した見守りの必要性が示された。県民の健康を見守る観点に立って対応していく」と答えた。