「普通」って何? ADHD本人、家族の葛藤と苦悩を映画化した、北 宗羽介監督と考える 【専門医師の解説つき】
発達障害をテーマにした映画『ノルマル17歳。-わたしたちはADHD-』。全くキャラが違う二人の発達障害の高校生が公園で出会うところから物語は始まります。奔放な性格で茶髪の朱里(じゅり)と真面目で勉強もできる絃(いと)。二人は少しずつ理解を深めていくのですが、家族やクラスメイトとの溝はなかなか埋まりません。当事者や周囲の人を通して見える発達障害の苦悩とは。監督の北宗羽介さん(以下、北さん)にお話を聞きました。 【データ】共働き世帯と専業主婦世帯、割合は? 女性が働きづらさを感じている原因は? ※ 本記事のインタビュー内容には、通常では不適切表現とされる用語が含まれています。それらは映画で取り上げているテーマ特性によるものであり、当事者の抱える悩みや葛藤をリアルに伝えるための表現であるととらえ、そのまま記事化しています。
発達障害だと認めたくない家族
北さんは、この映画を制作する前から発達障害と思われる人と関わってきたそうです。目をかけていた俳優さんが発達障害ではないかと思った時のこと。 「その人は子どもではなく成人した俳優さんだったのですが、約束した時間を忘れるし遅刻も多い。注意散漫で人の話を聞いていないのではないかとか思うこともしばしばありました。プライベートならまだしも、仕事に関することなので、しょっちゅう関係者に迷惑をかけてしまう。私は、その子のマネージメントやプロデュースに力を入れていたので、なんとかしたいと思い、今まで診察やカウンセリングを受けたことがあるのか、ないのであれば診てもらってはどうかという話をしました。」 ところが、何日か経って、その人の親御さんから電話がかかってきたそうです。 「そんなこと言わないでくれと言われました。その子はADHDに加えてASDも入っていたと思いますが、多分、家族はあまり見ないようにしてきたのだと思います。親は分かっていても見たくないではと感じました。だから、病院に行ったり、専門の医師に診てもらったりすることをしなかったのではないかと想像しました。子どもの頃はそれで通せたのかもしれません。しかし、その人が社会に出ていろんな人と関わるようになった時、遅刻してしまうとか物忘れしてしまうという症状が表に出てきて問題になったのです。」 遅刻や物忘れ、誰にでもあることのようですが、そんな生やさしいものではなかったと北さんは振り返ります。 「その人は、異様とも言えるほど頻回に問題を起こしました。遅刻が多く、言ったことを覚えていないことも多々ありました。こういうふうに行動してねとか、これをやっておいてねと伝えても、結構簡単なこともできませんでした。映画でも、絃(いと)の母親が、絃に注意するシーンがあるのですが、発達障害は気をつけて治るような問題ではないと実感しました。」