両者の最優先は国内......トランプorハリス、日本に都合が良いのはどっち?
他方、ハリスも中間層支援を明確にしていて、大企業に高い税金をかけ、低所得者に分配しようとしています。 トランプもハリスもアメリカの中間層の復活を第一とし、国内優先です。その点では大きな差はありません。 また、バイデン政権は『国家安全保障戦略』で、中国を最大のライバルと位置づけてきましたが、今回の大統領選挙では対中政策は大きな争点になっていません。今のアメリカの人たちは中国にそれほど関心を持っていないのです。 先日の討論会で、ハリスがトランプを『習近平に融和的だ』と批判しましたが、議会を見れば民主党議員も共和党議員も超党派で中国には強硬です。大統領選の結果、対中政策が劇的に融和的になるような可能性は低いのです。 その他の問題でもハリスの政策がトランプの政策に似てきている現状があります。 そのひとつが不法移民対策です。当初、民主党はメキシコとの国境に壁は造らないと主張していましたが、民主党支持者からも国境の厳格な管理を求める声が高まり、すでに壁の建設を始めました。かつてはトランプの不法移民対策を批判していたハリスも、今回の選挙では『トランプよりさらに強硬に国境を守る』と自分を売り込んでいます。 また、上院議員時代のハリスは気候変動対策に熱心で、『フラッキング』という環境に悪影響を及ぼす天然ガスの採掘方法に反対していたのですが、大統領選の勝敗を左右する激戦州のひとつ、ペンシルベニア州ではフラッキングが盛んなことから、フラッキング容認へと立場を変えました。 トランプのみならずハリスも"アメリカ第一主義"の傾向を強めています。国内に課題が多すぎて、現在、他国のことには目を向けられない状態になっているのです。 アメリカは今、ヨーロッパ、中東、中国で戦争や紛争を抱える"三正面"に陥りつつあります。『アジアの問題はなるべくアジアで解決してほしい。日本にもより多く負担をしてほしい』という圧力はいずれにせよ高まるでしょう。 トランプとハリスのどちらが大統領になっても、日本にはそうした時代への覚悟と準備が求められます」 トランプとハリス。どちらが日本にとって都合がいいかというと、ハリスという結論になる。しかし、どちらが大統領になっても、日本は今後"アメリカ頼り"では、やっていけなくなりそうだ。 新しい日本のリーダーは、そのことを肝に銘じてほしい。 取材・文/村上隆保 イラスト/はまちゃん 写真/時事通信社