両者の最優先は国内......トランプorハリス、日本に都合が良いのはどっち?
トランプは自分が大統領になったら、ウクライナもガザも戦争を終わらせると言っています。 副大統領候補のJ・D・ヴァンスは、トランプ陣営のウクライナ政策として『現在のロシアとウクライナの境界線を非武装地帯として要塞(ようさい)を築く』『ウクライナを中立化させてNATO(北大西洋条約機構)には加盟させない』と話しています。 これだと今ロシアが占領しているウクライナ領はロシア領になるということです。アメリカがロシアのウクライナ侵攻を認めたことになります。すると、プーチンはアメリカが認めるならバルト3国(エストニア、ラトビア、リトアニア)やポーランドにも侵攻するかと考えるはずです。そうなるとヨーロッパは大変なことになります。 この政策の背景にはアメリカ国民の『ウクライナにいつまでお金を出してるんだ。そんな余裕があるなら国内経済をなんとかしろ。不法移民がやって来ないようにメキシコ国境にもっと壁を造れ』という不満や要望があります。だから、ウクライナやガザの戦争を終わらせることはアメリカ国民にとって大歓迎なんです。 そして、ウクライナ戦争が終わると今度はウクライナ復興にステージが移ります。この復興には莫大(ばくだい)なお金がかかる。するとトランプは『日本はウクライナに戦車とか戦闘機とかの武器を全然送らなかったじゃないか。平和国家というならば復興にはお金を出せるだろう』と莫大な復興費を要求される可能性がある。 ほかにもトランプは日本の防衛費をGDP(国内総生産)の2%超に増やすことや『思いやり予算』といわれる在日米軍駐留経費の日本側の負担の増額を求めることも考えられるでしょう。アメリカ第一主義を掲げるトランプなら『日本がお金を出さないんなら米軍は去っていくよ。日本は自分たちで自分の国を守れ』と言いかねません。 一方のハリスは、今までどおりウクライナを支援しながら停戦は求めるというスタンスです。 結論としてはトランプがアメリカ大統領になると、日本にとっても世界にとってもリスクが大きくなるということです」 やはり、日本にとって都合が良いのはハリスなのか。 ■ハリスの政策がトランプに寄ってきた!? 一方、「トランプとハリス、どちらが大統領になっても日本は大変かもしれない」と言うのは、『Z世代のアメリカ』(NHK出版新書)などの著書がある同志社大学大学院准教授で、アメリカ政治・外交が専門の三牧聖子(みまき・せいこ)氏だ。 「今、アメリカ大統領選挙の争点となっているのは『国民の暮らし』と『不法移民の問題』です。有権者はインフレを早く収束させ、自分たちの暮らしを安定させてほしいと思っています。そのため、トランプもハリスも生活や経済の問題を最重視しています。 長年、共和党は大企業寄りの政党でしたが、トランプ率いる今の共和党は『労働者の党になる』と強調しています。具体的には国内産業や自国民の雇用を守るため、保護主義的な貿易政策を取り、輸入品に高い関税をかけることなどを打ち出しています。