【周回遅れの東京大学②】今も残る「東大は男のもの」意識、変えるカギは東大の「外」に
■ 女性学生が東大を目指す環境になっているのか? 矢口:教員のほうは、女性教員を積極的に雇用する策を講じています。もちろん、やみくもに女性教員を採用すればいいというわけではありません。 実際に採用するにあたり、学部側、女性教員側に何が必要かというところまで、大学として事細かく議論を続けています。 一方、女性学生に関しては、なかなか難しいところがあるというのが正直な気持ちです。現行の選抜制度では、男女比率を調整することはできません。したがって、今必要なのは、できるだけ多くの女子高校生に東大を受験してもらうこと、東大に行きたいと思ってもらうことです。 これは、今、大学としても情報発信などに力を入れている段階ですが、なかなか難しいです。というのも、これは東大側だけの問題ではないからです。 東大に入ることを一つの選択肢として考えられる環境で育つ女の子がどれだけいるのか。高校の進路指導で、女子生徒と男子生徒に全く同じ指導が行われているのか。 女子生徒に対し、「あなたは勉強ができるから地元の医学部に行くといい」「地元の国立大の教育学部に行って教員免許をとってはどうか」と指導している先生が、同じレベルの男子生徒に対し「あと少し頑張って東大を受けてみよう」と言うような場面があるかもしれません。 そういった指導をする社会背景は理解できます。ただ、女性を東大から遠ざけるような周囲の大人の態度が、女性が東大を受験しようと思える社会の実現に歯止めをかけてしまっています。これは、東大の「外側」の問題です。 ただ、東大の「外側」のことではありますが、私たち東大の人間がその矛盾を指摘しなければ、この問題は永遠に解消されません。私たちのほうからそのような指導や言動を再考すべきではないかと、訴え続けていく必要があります。 このような社会の状況が変わらないと、東大の女性比率が一気に増えるようなことはないだろうと私は感じています。 ──東大の「外側」に対し、どのような訴求方法が有効だと思いますか。 矢口:粘り強く社会に訴えかけていくほかありません。 この点については、私だけではなく、東大教員の多くが頭を悩ませているところです。外部に対して何を訴求していくべきか。それを社会に対し、どのような手段で発信していくべきか。東大の教員たちで議論をしている最中です。 第一の前提として、東大に魅力があると女子高校生に思ってもらわなければいけません。東大で学ぶこと、そして卒業することが、女性学生にとって本当に良いことであるという点を、説得力をもって示していく必要があるでしょう。 けれども、東大を出て社会で活躍している人の多くは男性です。政治家、官僚、企業トップ。ほとんどが男性ですよね。 東大を出て活躍している女性もたくさんいます。そういった方をロールモデルとして女子高校生にアプローチしていきたいと考えています。さらには、東大に入学した女性と男性が、将来、後進となる女子高校生や女子中学生のロールモデルとなるよう育てていく必要があると思います。