能登豪雨、農業被害も 念願の出来秋を直撃 「牛の鳴き声、心折れる」
断水、停電で搾乳できず
道路寸断で集乳ができない、生乳は処分――。地震で甚大な被害を受けた酪農家も、追い打ちをかけるように水害に見舞われた。 珠洲市若山町で乳牛75頭を飼養する道下要治さん(51)は、23日までの2日間、断水と停電で搾乳ができていない。牛に飲み水や餌を与えられず、牧草だけを与えてしのいできた。「牛たちは痩せてきている。乳が出せずに、牛が鳴くのを聞くと心が折れる」 23日正午ごろに県の支援で発電機が届き、2日ぶりに水を与えられた。ただ、普段使っている上水道が断水中のため、タンクに残る水12トンが最後の水だ。飲み水や子牛に与えるミルク、搾乳に必要な1日の水の量は10トン。「明日の朝でタンクの水は尽きる。給水が受けられないと水を与えられない」と嘆く。 餌の備蓄は1週間分ほど残るが、牧場につながる道路が土砂崩れで寸断。集乳車や餌を運ぶトラックが通れない状況だ。復旧が進むが道下さんは「あと数日はかかるかもしれない」とみる。 元日に起きた能登半島地震でも停電や断水で半月ほど搾乳できなかった道下さん。地震前に1日2トンあった乳量は、搾乳を再開した1月中旬に500キロまで減った。2月中旬に出荷再開するまでの生乳は処理した。9月には1600キロに乳量は回復してきていたが、再び生乳を処理せざるを得ない状況だ。「2日間搾乳できていないので、また処分しながら乳質検査を受けなければならない。牛の病気も心配だ」と肩を落とす。 (島津爽穂)
日本農業新聞