ハミルトン、メルセデスでの”後任”にF2アントネッリを支持。期待の秘蔵っ子どうなる
ルイス・ハミルトンは2024年限りでメルセデスを離れ、来季はフェラーリへと移籍する。チームは後任ドライバーの選定を進めているが、ハミルトンは期待の若手アンドレア・キミ・アントネッリを推している。 【ギャラリー】“美しいマシン率”も高い? 鮮やかなグリーンでF1を彩ったマシンたち メルセデスはハミルトンの離脱が決まって以降、後任ドライバーとしてマックス・フェルスタッペンをレッドブルから獲得する可能性を模索してきた。 ただ、現状はフェルスタッペンの決断を待っている段階で、同時にメルセデスの育成ドライバーであるアントネッリがハミルトン後任候補として持ち上がっていることも明らかになった。 アントネッリは2024年シーズンからFIA F2に参戦しているまだ17歳の若手。メルセデスが期待を寄せているドライバーで、2022年にイタリアとドイツのFIA F4でチャンピオンを獲得し、2023年はフォーミュラ・リージョナル欧州と中東でチャンピオンに。今季はF3を飛び級してプレマからF2に参加している。 ハミルトンは、そんなアントネッリをメルセデスは自らの後任として起用すべきだという考えを示した。 「正直に言って、僕はトト(ウルフ/メルセデス代表)の計画が何なのかは知らないけど、僕としては若手を起用すれば良いと思う。もしそれが僕の仕事なら、多分キミを起用するだろうね」 メルセデスの起用方針はこれまで、ルーキーの起用には積極的ではなかった。しかしハミルトンの考え方は、今のメルセデスの考えと大きくずれていない可能性もある。 メルセデスはハミルトンの離脱が決まって以来、アントネッリの育成プログラムを加速させているのだ。シーズン開幕後、メルセデスは旧型のF1マシンを使ったテストプログラムにアントネッリを参加させており、今後もさらにテストが計画されている。 なおFIAに対しては、スーパーライセンスの年齢制限よりも若い段階で発給することを求める免除申請があったことも分かっており、よりアントネッリのF1デビューに関する憶測が広まるという一幕も先日あった。 アントネッリは、F2でまだ表彰台はないものの、オーストラリアラウンドのスプリントでは4位も獲得しており、順調に成長を続けている。チームメイトでF1代役参戦で印象的な走りを見せたオリバー・ベアマンに対してもまずまずの成績を収めている。 ウルフ代表はマイアミGPの際、アントネッリの成長についてこう語っていた。 「我々が予想していた軌道に完璧に乗っている」 「楽な日もあれば厳しい日もある。ふたりのドライバーとチームとの間で、いくつか解決すべき問題はあるものの、それは予想外のことではない。そしてテストは非常にうまく進んでいて、我々は落ち着いて冷静に取り組んでいる」 F1チームはここ最近、ドライバーとの契約を相次いで進めている。今彼らは2026年以降の新レギュレーションの時代に向けて、長期的な視野に立って考えている。 ハミルトン、そしてランド・ノリス(マクラーレン)やフェルナンド・アロンソ(アストンマーティン)、ニコ・ヒュルケンベルグ(ザウバーと契約)、アレクサンダー・アルボン(ウイリアムズ)と、契約が発表されたドライバーは皆が2026年、そしてそれ以降に向けて契約を結んだ。チームは2009年以来最大となるであろうレギュレーション変更に向けて、ドライバーという要素を安定させようとしている。 ウイリアムズは過去にメルセデス育成のジョージ・ラッセルを3シーズンにわたって起用していた。今、アントネッリを起用する可能性があると噂されているチームでもあるが、彼らも前述の観点から2025年の1年だけアントネッリを起用することに興味はないはずだ。 ラッセルを預かっていた3年間はウイリアムズ、そしてメルセデスの両チームにとってプラスの案件だった。ラッセルはハミルトンのチームメイトとなる準備ができ、ウイリアムズはチームが苦しい状態にある中でも、優れた将来性のあるドライバーを起用できたからだ。 同時に当時の決断は、メルセデスが新人をトップクラスのマシンに乗せることへの消極性をも示していた。 ただ2024年現在のメルセデスは、タイトルを争えるようなマシンを用意できているわけではないため、今は状況も異なっている可能性がある。加えて、2026年の“リセット”までにレッドブルを捕まえられるとはパドック内でも信じられていないため、2025年に過度な期待を抱くこともない。 アントネッリへの大きな期待からメルセデスが周囲の注目を集めることは必至ではあろうが、2025年は彼を育てて経験を積ませる絶好のタイミングになるだろう。 なにより、アントネッリを支持するハミルトンは適当を吹かしているわけではないはずだ。なにしろ、彼自身が2007年に待望のF1デビューを果たしたとき、マクラーレンで2度のF1王者であるフェルナンド・アロンソとコンビを組んだのだから。 そして、新人起用の”リスク”を負ったマクラーレンは、2008年にハミルトンがF1世界王者となるという形でリターンを得た。メルセデスでもそれが再現されるかもしれない。
Filip Cleeren
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