円安深刻化の芽、日本からの資本流出が過去最高の経常黒字上回る
ニッセイ基礎研究所の上野剛志上席エコノミストは、「海外企業の参入障壁が大きい」と話す。「海外企業が日本で事業を始めると手続きが煩雑」だと指摘し、「日本は成長率が低いので市場が広がっていかない」とも述べた。
日本の潜在的な経済成長率は過去20年間停滞しており、日本銀行による直近の推計では0.6%にとどまる。これは、資本流出がさらに加速する可能性を示唆する。
日本では海外からの証券投資残高がGDPの90%に上り、海外からの直接投資残高をはるかに上回る。
しかし、こうした証券投資の資金流入について、三井住友銀行の鈴木浩史チーフ・為替ストラテジストは、ほとんどが為替ヘッジ付きのため、円高にはつながりにくいと話す。また「短期の投機的なフローが多く、長期保有は進んでいない」ことからも円高効果が発揮されていないと説明した。
日本の金利は他国よりもはるかに低い。日本に投資する海外投資家は円安をヘッジすることで自国との金利差からリターンを得られるため、為替ヘッジ付きで投資する場合が多い。
一方で東海東京の柴田氏は、日本の対外証券投資について「国内に投資先がないので、米国債や米国株に投資した際の配当金や償還金は、海外に再投資される場合が多い」と話している。
--取材協力:船曳三郎、山中英典、日高正裕.
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Masaki Kondo, Daisuke Sakai