【コラム】ドル高の猛威、アジア通貨当局には介入や他の選択肢-モス
日本銀行は3月にマイナス金利政策を解除し、無担保コール翌日物金利を0-0.1%程度に誘導する事実上のゼロ金利政策に移行することを決めた。円相場を反転させるはずだったが、実際には34年ぶりの円安更新が続いた。日本の当局は最大限の直接的介入の脅しを控えており、その慎重さは賢明だ。ドルの騰勢が強い時期に直接闘うことだけは避けたい。タイミングを選ぶのが一番だ。
多くの場合、長期的に通貨の命運を好転させることが介入の目的ではない。下落や上昇の阻止ではなく、管理することが当局の狙いと考えられる。一方的な動きとトレーダーに思わせないため、双方向のドラマを若干注入しようとするかもしれない。こうしたアプローチは時間稼ぎに有効だ。
通貨当局の行動が転機になった例も存在する。2000年後半には当時下げ止まらなかったユーロが日米欧のユーロ買い協調介入で底入れした。銀行の不良債権問題を背景に1998年半ばにかけ円が急落した際は、ルービン米財務長官(当時)の下で日米協調による円買いの為替介入が実現し、流れを変えるきっかけになった。
今の状況は危機とはいえず、97年に発生したアジア通貨危機のような事態からは程遠い。為替レートははるかに柔軟で、短期的な不安感があったとしても長期的なメルトダウンは回避できる。人為的に高くなったバリュエーションを正当化するために外貨準備を使い果たしたいと誰も思わない。
戦争の話やちょっとした介入、空売り投資家に二の足を踏ませる当局の何らかの対応を恐らくそれは意味する可能性が高い。予定された政策決定会合以外で金利を引き上げることさえ必要かもしれない。これは間違いなく注目を集める。通貨ルピアの動向に常に敏感なインドネシアは、経済を窒息させるほどでないにしろ、その手段に訴えるかもしれない。
オニール氏の率直な発言は、米国内で激しい抗議にさらされ、撤回された。「強いドル政策」を放棄するようなことがあれば、ヤンキースタジアムでブラスバンドを雇い、間違いなく皆に聞こえるようにするだろうと同氏は皮肉交じりに宣言した。アジアについて言えば、必要なときにトランペットがあったためしがない。