【コラム】ドル高の猛威、アジア通貨当局には介入や他の選択肢-モス
(ブルームバーグ): ジョージ・W・ブッシュ政権で財務長官を務めたポール・オニール氏は、初めての海外出張の際、称賛されることも多いが不満の対象にもなった「強いドル政策」に大胆に疑問を呈し、物議を醸した。
オニール氏はクリントン政権時代からドクトリンを受け継ぎ、それをレトリックに過ぎないと考えていた。国内では称賛されたが、国外、特にアジアでは助けにならない見なされていた。
オニール氏によれば、米国が実際に保持していたのは「強い経済政策」だった。他の国・地域に比べ成長が強ければ、ドルの価値に反映される。成長が衰えれば、ドルは下落するだろう。人々は冷静になるべきだ。その助言は、東京とソウル、ジャカルタ、ニューデリーで今も数十年前と同じように有効だ。
現職の財務省当局者らは、先任者ほど為替政策について語らず、しつこく聞かれることもない。しかし、強いドルは実際に存在し、驚くほど回復力のある米経済を反映している。2024年に矢面に立たされる国・地域にとって選択肢は多くないが、なすすべが全くないわけではない。
今年のドル高騰は起きるはずではなかった。一定の利下げが正当化できるほどインフレが十分後退し、景気が十分に落ち着きつつあると米連邦準備制度が示唆するという見通しを前提に多くの専門家がドル相場の下向き調整を予測していた。だが当局者も今疑いを抱いている。
物価上昇ペースの低下という非常に心強い兆候が一時表れたが、最近の進展は期待外れだ。労働市場はなお力強く、小売りは好調で、製造業は回復しつつある。パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長は16日、政策担当者が利下げ決定まで待つ期間がこれまでの想定より長くなるとの認識を示した。これは連邦準備制度とって後退だが、ドルにとっては好材料だ。
この変化はアジア全体に波及した。インド・ルピーは16日に過去最安値を更新。インドネシア銀行(中央銀行)は、通貨ルピアを支えるため市場介入に動き、韓国当局も行き過ぎたウォン安に異例の警告を発した。