伝統食文化維持、ブランド農産物発展へ 静岡県のJAの取り組み
静岡県のJAふじ伊豆三島函南地区営農販売課は、栽培指導から製造、流通、販売までの戦略を構築し、生産振興と生産者所得向上を目指している。そのために、地元の業者や店舗、生産者との連携を深め、伝統の食文化の維持や地域のブランド農産物の発展に取り組んでいる。 6月の改正食品衛生法の完全施行に伴って漬物の製造販売が保健所による営業許可が必要となったため、栽培・製造の継続が危惧された地域伝統の「三嶋大根」を使った正月用のたくあん作りの維持でも活躍。JAが生産者と管内の漬物業者をつなぎ、販路を確保した。 正月用以外の新しい販路確保に向け、地元の飲食店と連携し、たくあんやダイコンを使ったメニュー作りを進める。規格外品を使った新商品開発にも取り組む。 生産者の一人、本間一平さん(42)は「これまでは個人で続けてきた栽培・製造・販売を、JAがつなぎ役となって一連のルートをつくってくれた。とても心強い」と話す。
若手職員 施策の展望語る
9月には、同課の若手職員が、地元食材の販売戦略・産地振興の取り組みについて発表した。発表会は3回目だが、今回は初めて生産者に参加を呼びかけた。生産部会員やJA役員ら約30人が集まった。 ブロッコリーでは、国の指定野菜に追加されることに着目した。指定産地になるメリットと条件を確認し、作付面積の拡大に向けた施策を展開していると説明した。エダマメでは、新たな商品の開発や規格外品の活用に取り組んでいると紹介。生産量が頭打ちの中、新たな設備投資を必要としない販路開拓を目指しており、既に新商品の試作段階に入っていると発表した。 生産者との意見交換では、生産者から「参考になった」「ぜひ協力したい」「一緒に頑張ろう」などの意見が相次いだ。 同課の大滝真人地区課長は「農産物のマーケティングでは、営農指導と販売戦略を一連の流れとして考えることが重要だ。発表の場に生産者が加わることで、一丸となって取り組むことができる。部会員同士の情報共有の場としても効果的だ」と話した。続けて「若手職員には、積極的に地域のさまざまな業種の人と交流し、広い視野で生産振興、販売戦略構築に当たってほしい」と期待を示した。
日本農業新聞