日鉄 米政府に徹底抗戦 バイデン氏ら提訴「違法な政治介入」 USスチール買収禁止措置に「諦めない」
米鉄鋼大手USスチール買収を巡り、バイデン米大統領から禁止命令を出された日本製鉄の橋本英二会長が7日、東京都内で開いた記者会見で、命令の無効を求めてバイデン氏らを提訴したと発表した。買収計画を「諦める理由も必要もない」と強い口調で話し、徹底抗戦する姿勢を鮮明化。日本企業が米大統領を訴える異例の展開で、問題が長期化する恐れもある。 バイデン氏の判断に影響を与えたプレーヤーとして、民主党の有力支持団体である全米鉄鋼労働組合(USW)のマッコール会長を名指しし「買収を阻止するため違法行為を行った」と指摘。「これに政治的な理由から応じたバイデン氏の違法な政治介入」があり、買収を審査する対米外国投資委員会(CFIUS)の審査が「適正にされずに禁止命令に至った。到底受け入れられるものではない」と強調。「本当に安全保障上の問題があるのなら、とっくの昔に承認しないと判断できたはず」と主張した。 また、USスチールの買収を狙っていた米鉄鋼大手クリーブランド・クリフスとマッコール氏の思惑が一致し、買収を妨害したとして、妨害行為の差し止めと数十億ドルの損害賠償を求める訴訟も提起。マッコール氏は「根拠のない主張」だとして争う考えを示した。 バイデン氏は原則30日以内の買収計画破棄を求めており、期限は2月2日。「それも含め無効を争う」立場で、当面は期限延長を認めてもらう必要がある。 時折「バイデン」と呼び捨てにするなど、終始、強い口調で訴えた橋本氏。計画変更などの代替案については「一切頭にない。米国での事業遂行を決して諦めない」とし、「訴訟を通じていろいろな事実が示されていくと確信している。(命令は)法令に違反しており、勝訴のチャンスはある」と話した。 鼻息を荒くする日鉄だが、国際的な企業の合併・買収(M&A)に詳しい山田広毅弁護士は「難しい訴訟になる」と言及。「米政府は強い裁量を持つ大統領の判断の是非を審理すること自体がおかしいと主張するだろう。審理に入り、競合他社などの働きかけを明らかにできても、政府の判断の動機づけになったと客観的に証明するのはハードルがかなり高い」と話した。