琉球ゴールデンキングスの脇役が大一番で躍動する理由、桶谷大HCの哲学「多くの選手を起用することには1つの信念を持っています」
選手育成への確固たる考え「やっぱり試合に出た方が成長します」
まず、桶谷ヘッドコーチはお互いの手の内がより分かるCSにおいて、主力以外で活躍する『Xファクター』の存在をより重視する。「チームはスタートだけで戦っているわけではないです。出るメンバーがそれぞれの役割を果たすことがCSではより重要で、やっぱりXファクターが出てこないといけない。お互いに戦術、戦略が分かっている中、どこで点数を取るかと言ったら、言い方は悪いですけど相手が捨てているところで点数を取ることが必要です。そこで小野寺、牧にしても仕事をしてくれた。松脇もCSに入ってシュートタッチが良くなかった中、3ポイントを1本決めてくれて、チームは大きく盛り上がりました」 また、臨機応変な起用が求められる中でも「やっぱり30分を超えてくるとパフォーマンスは落ちるかなと思っています」と言い、タイムシェアを大切にしている。「もちろん試合展開によっては30分以上出さないといけない選手が生まれる状況はあります。勝負どころや流れが悪い時はコートに置きたい選手がいますが、マッチアップなどを見て休める時は休ませるようにしています」 さらに桶谷ヘッドコーチは、自身の起用スタイルを貫けるのはチームの一体感のおかげと感謝する。「プレータイムは短くても、その瞬間で必要になった時、レギュラーシーズンで選手が乗り気になるのは難しい時もあると思います。でもCSになった時、このチームは短い時間でも仕事をしたいと言ってくれる選手たちばかりです。みんな同じ考えて戦ってくれていて、短い時間でもみんなが『はい、行きます』と気持ちよくコートに入ってくれる。それが好循環を生みますし、このチームの強さ、CSで勝っていける理由になっていると思います」 そして、指揮官が大一番でもいつもと同じ選手起用を貫くのは、選手育成に対する譲れない信念があるからだ。「僕は試合でベンチ入りした全員を出したいです。やっぱり試合に出た方が成長します。メンタル的にも試合で1つのミスをした経験から、『何クソ』って練習ができると思います。僕らが戦術やスキルを教えたりするより、試合を経験させることが選手の成長に繋がります。流れが良い時にしか使えない選手もいたりして、そこはヘッドコーチの采配として一番難しい部分です。それでも、自分の中で、多くの選手を起用することには1つの信念を持ってやっています」 その人柄からか、桶谷ヘッドコーチは他チームのコーチ仲間との繋がりも深い。ファイナルでは、普段はライバルである彼らから以下のように思いを託されている。「日本人のコーチ陣から、セミファイナルになった時点で『残っている日本人のヘッドコーチは桶さんだけです。桶さんに全部かかっているんですよ』みたいな、なんかよくわからないプレッシャーをかけてくる人たちが多いです(笑)」 大一番でも文字通りチーム全員で戦う信念を貫くことで、桶谷ヘッドコーチは再び沖縄に歓喜を届けるつもりだ。
鈴木栄一