山口紗弥加さん(44)「デビューから30年…20代は暗黒期でした」|CLASSY.
20代のとき、一度仕事を辞める決心をしていたんです
――14歳でデビューし、長くキャリアを重ねられていますが、20~30代を振り返って、大変だったことや苦労したことは、どんなことですか? デビュー当初は、“アイドル(女優)”的なカテゴリーに分類されていたのかな、と思います。私自身は役者に憧れを抱いていたのですが、仕事を重ねるほど、バラエティの方向に進んでいった時期があって。17歳から20代前半くらいまでかな。その時期がいちばんしんどかったですね。“やりたいこと”と“やれること”の間で葛藤して、ディレクターの要求に傷ついて。何もできず、ただ笑ってるだけのつまらない自分にも怒りを覚えたし、嘘ばかりの大人たちにも失望した。誰かに助けてほしいのに、誰にも相談できずに体調を崩してしまって。仕事を引き受けておきながら失礼な話ですが、生きている心地がしなかった。「これは本来の私じゃない」と感じていたし、「私がやりたいのはこれじゃない」という気持ちも強くなり、この仕事を辞める決心をしたんです。 ところが、最後の仕事として出演した舞台でお芝居の面白さに気づいてしまった。やり直しがきかない一発本番の舞台上のやりとりやお客さんを巻き込んで作り上げていく空間の熱量に衝撃を受けて、「辞めたくない」と思ったんです。不思議なことってあるもので、この舞台の稽古が始まる直前、デビュー前に出会っていた現事務所の社長と10年ぶりに再会してるんですよ。高熱を出して診察を待っていた、自宅近くにある“町の病院”の待合室での出来事でした。その社長が公演を見に来てくれて、「辞めるな」と引き止めてくれたんです。奇跡とも思える偶然の再会があり、事務所を移籍して役者を続けられることになりました。 ――その出来事が大きな転機になったんですね。 そうですね。事務所を移籍したことは、目指していた役者の仕事の第一歩になりました。ただ、お芝居が楽しいとか、頑張りたい気持ちはありましたが、見事に何もできなくて、演出家からも怒られてばかり。毎日、どうやって逃げようかと考えていました。20代は、自分の無能さと無力さを思い知った暗黒期でしたね。こうなりたいという自分の理想はすぐに実現しなかったけれど、人に学び、守られ導かれて今があると思っています。 今回の「私の死体を探してください。」は、私の中で何かが変わったような…新しい自分に触れたような感覚を得られた役柄でした。新しい、何か――。年齢を重ねてもなおそういうものに出会えるということが嬉しくて、遠回りだったと思えるような時間ですらも必要な道のりだったんだな、と今は理解しています。 ――がむしゃらだった20代を経て、30代はどんなふうに過ごしていましたか? ただひたすらもがいていた時間を経て、役者としての武器、個性を模索するようになりました。でも、作られた個性はもはや個性じゃないし、個性的を売りにする、とってつけたような芝居なんて、私は見たくない。個性ってきっと、その人から自然と滲み出るものだから。そう考えるようになって、無理に個性を追い求めることと、他者の評価を気にすることをやめました。きっかけがあったわけではないのですが、人の目ばかり気にして疲れ果て、何もできずにうずくまっている自分がほとほと嫌になったというか。あえて同業者と関わらないようにしていた時期もありました。どうしてもそこで比較してしまうので。30代は内面を育てる、根っこを太くする時期だと捉えて、ひとり旅に出てみたり、全く仕事と関わりのない人と時間を共にしてみたり。知識を蓄え、経験値を高めようと考え方を変えた時期でもありましたね。 <Profile> 1980生まれ。福岡県出身。14歳でデビュー後、バラエティ番組やドラマ、映画、舞台と多岐に渡って活躍。近年の主な出演作は、ドラマ「ペンディングトレイン-8時23分、明日 君と」(TBS系)、「柚木さんちの四兄弟。」(NHK)、映画「劇場版ラジエーションハウス」、「わたしの幸せな結婚」など。現在放送中のテレビ東京ドラマ「私の死体を探してください。」(毎週火曜24:30~)では、自身のブログで自殺をほのめかし、消息不明になるミステリー作家・森林麻美を演じる。 <Information> ドラマチューズ!「私の死体を探してください。」毎週火曜 深夜24時30分~25時(テレ東ほか) ベストセラー作家・森林麻美がブログで自死をほのめかし「私の死体を探してください。」という文章を残して消息を絶つ。担当編集者の池上沙織は麻美を探すが、その後も麻美のブログの更新は続き、さまざまな秘密が次々に暴露されていく。人間の醜い欲望が溢れだすノンストップスリラー。 撮影/You Ishii ヘアメーク/米澤香央里 スタイリング/服部昌孝 取材/坂本結香 構成/越知恭子