「信じ難いほど不人気...」ガザ戦争で逆風のバイデン、再選のカギ握るのは「激戦州の少数派」
激戦州で鍵を握るアラブ系
外交実績を比べれば、有権者はトランプではなくバイデンを選ぶはずだと、ラットバクは主張する。「何十年にも及ぶ外交経験や、同盟国との深い信頼関係を考慮すれば、今まさに国際舞台においてアメリカが必要としている指導者はジョー・バイデンにほかならない」というのだ。 「それに比べトランプは、アメリカを北朝鮮との核戦争に導きかねないような発言をツイッター(現X)で重ね、ウラジーミル・プーチンら独裁者をたたえて世界におけるアメリカの指導力を衰退させた」と、ラットバックは述べ、もしトランプが再選したら、1期目よりも「もっと事態は悪化するだろう」と警告した。 ガザの戦闘がアメリカの国内政治に及ぼした副次的な影響で、選挙ウォッチャーはアラブ系とイスラム教徒のアメリカ人に注目するようになった。 この2つの集団はかなりの部分重なり合っている。アメリカの人口に占めるその割合は小さいが、この層の票は重要な激戦州の選挙結果を大きく左右する可能性がある。 20年の国勢調査によると、中東または北アフリカにルーツを持つアメリカ在住者は350万人。この調査は宗教については調べていないが、ピュー・リサーチセンターの17年の調査では、アメリカ在住のイスラム教徒は340万人で、50年までに倍増する見込みだ。 今年4月に発表されたピューの別の調査では、アメリカ在住のイスラム教徒の66%が民主党または左派寄りの第3政党を支持すると答えていた。彼らは数の上では小さな集団だが、ミシガン州などの激戦州に固まって住んでいて、州規模の重要な選挙の結果に大きな影響を与える。 全米各州のうち、州人口に占めるアラブ系が最も多いのはミシガン州だ(アラブ・アメリカ研究所調べ)。前回の大統領選で、同州ではバイデンがトランプに15万4000票余りの僅差で勝った。この時、同州で有権者登録をしたイスラム教徒は20万6050人。 同州で今年2月に行われた大統領選の民主党予備選では、イスラエルを支持するバイデンに抗議の意思を示すため、「支持者なし」と投票した人が10万人を上回った。 ミシガン州だけではない。やはり激戦州のウィスコンシン州とペンシルベニア州でも、アラブ系とイスラム教徒の人口は前回の大統領選でバイデンがトランプよりわずかに多く獲得した票数を上回っている。 ウィスコンシン州では前回の大統領選でバイデンは2万票の差でトランプに勝ったのだが、同州で今年4月に行われた民主党予備選では、およそ4万8000人の有権者がバイデンの中東政策に抗議するため「党の指示に縛られない選挙人」に投票した。 草の根団体「ミリオン・ムスリム・ボーツ」によると、全米のイスラム教徒のうち前回の大統領選に投票した人は150万人で、投票率は71%だった。 今回の選挙でこの割合がさほど低下しなくても、ミシガン州などの激戦州ではトランプが有利になる可能性があると、民主党の戦略担当者らは警戒している。 イスラエルのガザ侵攻でバイデンは「アラブ系の票を当てにできなくなったと思う」と、前回の大統領選でバイデン陣営の世論調査を担当したセリンダ・レイクは本誌に語った。