型破りな冒険マシン! アリエル・ノマド 2でクリスマスツリーを運ぶ(1) 流暢な没入体験
嗅覚でもドライバーを楽しませるノマド 2
M9号線を降り、一般道へ。左右にスコットランドの自然が広がる。ステアリングの反応はクイック。ダブルウイッシュボーンのサスペンションは、柔軟に路面へ追従する。 雨でぬかるんだ農場の敷地へ。カレドニアン・クリスマスツリー社を営む、アンナ・ブラック氏との約束がある。車重は715kgと軽いため、四輪駆動でなくても困らない。タイヤが目視できるから、カメラ映像で確認する必要もない。 毎年1万本ものクリスマスツリーが、ここから英国全土の園芸店へ出荷されているという。ノルドマン・モミ、ロッジポール・パイン、ノルウェー・スプルース、フレイザー・モミなど、実は多くの樹種がある。 この中で、ハッチソンがティリー島へ持ち込んだのは、ノルウェー・スプルース。一番美しい樹形のものを、広い植林地から時間をかけて選ぶことにした。 ノマド 2は、モミやスプルースが育つ森の中を進む。トラクションに不足はない。目が覚めるような、常緑樹の香りが鼻先へ直接流れてくる。運転へ没入できるマシンだが、嗅覚でもドライバーを楽しませてくれる。 高さ1.8mほどの1本に決め、ブラックから借りたノコギリで伐採。ノマド 2の助手席へくくった。きれいな三角形の先端が、パイプフレームから突き出ている。
鋭く反応するステアリングはリニアで狙い通り
ティリー島へ渡るフェリーは、スコットランドの西、オーバンという町から出ている。徐々に周囲は暗くなり、小雨が振り始める。約2時間、水浸しの道を走ることになった。 フロントガラスにはヒーターの風を当てられ、曇りとは無縁。トラクション・コントロールは7段階から選べるが、足取りは確かで、真ん中の設定でも不安感はない。しかしフロントは軽く、気を抜くと左右に進路が乱れがち。 アーン湖を巡る連続したカーブで、流暢な身のこなしを確かめる。鋭く反応するステアリングは、リニアで狙い通りだ。 今日のノマド 2には、1800ポンド(約35万円)のオプション、3モードECUが実装されている。最高出力は309psまで引き上げられるが、デフォルトの263psでも相当速い。 ブレーキはオプションのAPレーシング社製で、4ポッドキャリパーが組まれる。強力なうえに、制動力を調整しやすい。エンジンブレーキでも、効果的に速度を落とせる。 液晶モニターのメーターパネルと、赤いイグニッションボタンが眩しい。まだプロトタイプ段階で、調光機能は備わらないようだ。22時に、オーバンのホテルへ到着した。 翌朝7時に全長99mのフェリー、MVクランズマン号へ乗船。船内のカフェで朝食を取りつつ、マール海峡に登る朝日を雲の合間から拝む。イルカたちが、船を先導するように泳いでいる。 この続きは、アリエル・ノマド 2でクリスマスツリーを運ぶ(2)にて。
リチャード・ウェバー(執筆) マックス・エドレストン(撮影) 中嶋健治(翻訳)