甲本ヒロトと内田勘太郎によるブギ連、キネマ俱楽部で奏でた日本屈指のブルース
さすらう魂の旅路を思わせる演奏
ドロドロなスローブルース「トッポい世界」に続いて飛び出したのは、対照的にアップテンポなブギ「バットマン・ブルース」。青い照明もスリリングに、ギターリフとハープが絡み合う。客席からステージに「ありがとうー!」と声が飛ぶと内田は、「50年以上こういう生活をしてるけど、ありがとうって言われたのは初めて」とポツリ。緩やかで抒情的な「軽はずみの恋」から、ハープのキーを確認する微笑ましいやりとりから始まった「あさってベイビイ」。2人が言葉を交わすとリラックスした雰囲気ながら、曲が始まるととたんに張り詰めた空気感が漂うところは、歌声とハープ1つ、ギター1本で長年に渡り、確固たる存在感を発揮している2人ならではの迫力のライブパフォーマンスだ。 〈出かけよう 出かけようぜ 乗って行こう 行き先は決めず〉と歌う「黄金虫」、それに続いたスリーピー・ジョン・エスティス、ハーモニカ奏者ハミー・ニクソンを歌った「49号線のブルース(スリーピーとハミー)」は、まさにそんなミュージシャンたちのさすらう魂の旅路を思わせた。尚、「49号線のブルース(スリーピーとハミー)」を歌う前にはヒロトが、ステージ上に置かれたヒロトと内田の椅子の距離をどうやって決めたのかを明かし、70年代に憂歌団として彼らと共演している内田の記憶を尋ね、「このぐらいかな」と答えたことから決められたそうだ。 「新しいアルバムが出まして、こんなツアーもできることになりました。ありがとうございます!」(ヒロト) いよいよライブはクライマックスヘ。ニューアルバムのタイトル曲でオープニングを飾るシャッフルナンバー「懲役二秒」でヒロトと内田が声を合わせると、オーディエンスも自然と合唱して一体となる。「ブギ連だぜー! もうどうなってもええな! 練習してきたことが全部台無しじゃ(笑)。それが楽しい。みんなにはそれを楽しんでもらいたい」とヒロトがつぶやいて、大喝采を集めた。内田が軽快に爪弾くフレーズに手拍子が沸き起こり、マイナーブルースのテーマ曲「ブギ連」へ。このユニットの原点とも言えるジョン・リー・フッカーばりに淡々とフレーズを繰り返すブギは、どんどん暗い沼の奥底へと引きずり込まれるような悪魔的でダークな魅力があった。 アンコールでは、ヒロトが「勘太郎さんのギターをたっぷりと楽しんでください」と呼び掛けると、内田のメロウな旋律を「ええなあ~たまらんで」と胸に手を当てて聴いている。時折「そうくるかあ~」「うわあ、すげえなあ」と呟いたりと、微笑ましく癒されるチルアウトタイムとなった。曲が終わるとヒロトは「「孤独のグルメ」みたいだったな(笑)」とポツリ。 ラストは再びSEで虫の声が聴こえる中、「次の街が呼んでいるんです。電車が来た来た。今日はありがとう!」と感謝を伝えてから、ニューアルバムの最後を締めくくる「ブラブラ」へ。〈天国ブラブラ ブラブラ〉静かにゆっくりと、どこか遠い記憶から聴こえてくるような浮遊感が虫の声と混ざりあう。夏の終わりの思わせる、感傷的な余韻を残して、ライブは終了となった。拳を上げるでもなく、一斉にジャンプするわけでもない。日本屈指のブルースマン2人の歌とハープとギターに、ただただどっぷりと酔いしれた夜だった。 ブギ連〈第2回ブギる心〉 2024年10月11日(金)東京キネマ俱楽部 〈セットリスト〉 1. ブギ連ジャイブ 2. ブルースがなぜ 3. やっとられん 4. 畑の鯛 5. オイラ悶絶 6. 闇に無 7. 気まぐれに首が 8. トッポい世界 9. バットマン・ブルース 10. 軽はずみの恋 11. あさってベイビイ 12. 黄金虫 13. 49号線のブルース(スリーピーとハミー) 14. 懲役二秒 15. ブギ連 EN1. 波を越えて EN2. ブラブラ
Takayuki Okamoto