太陽系の「縁」には何が?高速探査機「ニュー・ホライズンズ」冥王星接近へ
未知の世界をさぐる宇宙の旅が7月14日に、大きなハイライトを迎えます。2006年1月に打ち上げられた探査機「ニュー・ホライズンズ」が、冥王星に最接近するのです。どんな探査機が、どんなところへ向かっているのか。簡単にお話しいたします。
9年かかっても、超高速の探査機です
冥王星は、とても遠くにある天体です。地球からの距離は、約50億km。太陽より30倍以上も遠いことになります。仮に時速1000kmの飛行機で向かったとしたら、500年以上かかる計算です。 ニュー・ホライズンズは、そんな冥王星に接近する初の探査機です。遠くを目指すために、速く飛ぶようにつくられました。打ち上げ直後の秒速16kmは、時速に直すと5万kmを超えます。約38万キロ離れた月の軌道を、史上最速のわずか9時間後に突破。冥王星までは9年あまりかかりましたが、これでもめちゃめちゃ速いのです。
長旅の途中でエネルギー節約のために繰り返した休眠から、ことし1月に完全覚醒。以後は冥王星を観測しながら、距離を縮めています。最接近まで10日を切ったところで通信に不具合が生じ、予定通りの探査が行われるのか心配されましたが、原因が判明し、復旧の見込みも立っています。
不思議な「冥王星」への初探査で期待されること
冥王星はこれまで、詳細な画像やデータを直接取られたことがありません。大型望遠鏡による観測と分析で、窒素や一酸化炭素の氷と岩石があること、薄い大気があること、天体内部に地熱で融かされた水があるかもしれないこと、冥王星の半分以上ある大きな衛星「カロン」があること、などはわかっています。しかし、遠いうえに直径約2300kmと地球の月よりも小さいこともあり、より詳しく知るためには接近しての探査が必要なのです。
ニュー・ホライズンズが6月5~18日に撮影した画像。一見すると、モザイク状の白丸にしか見えません。しかし、日が経つごとに解像度が上がり、明るい部分と暗い部分があることもわかります。このような画像から、地形に富んでいると考えられ、極域には冷えて固まった窒素の氷が覆う「極冠」がある可能性も指摘されました。