その座席、実は超豪華! 驚きの移植「座席だけ名列車」たち ライバル私鉄が“夢の競演”している車両も!?
「京王の夢」が島根で叶った? しかも座席はライバル私鉄!?
■一畑電車5000系電車 1998(平成10)年に、京王電鉄5000系を改造して誕生した急行形電車です。3扉ロングシートであった京王5000系を2扉クロスシートに改装しており、もともと扉があった部分にも同一仕様の二段窓が取り付けられて、編成美に配慮しています。 京王5000系は登場時、2扉クロスシートの特急形として検討されるも断念された車両ですから、5000系が京王電鉄から引退した後に、「こうしたかった5000系」が実現したともいえます。 座席配列は車端部と側扉付近以外は1+2列のクロスシート。1人掛けは転換式クロスシート、2人掛けは回転式クロスシートです。 この2人掛け回転式クロスシートは、京王5000系と同じ1963(昭和38)年に登場し2000(平成12)年に引退した、小田急電鉄のロマンスカー3100形「NSE」に装備されていたもの。自然な形状の背もたれ、お尻側が少し下がった座面、座った際に足を起きやすいフットレスト、柔らかいクッションとよくできています。個人的にはロマンスカーで最高の座席のひとつです。 なお一畑電車5000系は、1編成が車内を木質化した「しまねの木」に改造されていますが、こちらのセミコンパートメント風座席も、小田急3100形由来の回転式クロスシートの下半分と、1人掛け転換式クロスシートの下半分を流用したものであり、元座席の着座感を残したものです。 とはいえ一畑電車5000系は近い将来の置き換えが計画されており、乗車は今のうちかもしれません。かつて限定運用だった特急「スーパーライナー」も、新鋭7000系に置き換わり、確実に乗る方法がないのが難ですが……。7000系はボックスシートとロングシート仕様ですが、今後は5000系を受け継ぐような特急形仕様の車両の登場に期待したいものです。
JR九州と北海道にも
■JR九州713系電車 国鉄が1983(昭和58)年に投入した、2扉セミクロスシートの近郊形電車です。1996(平成8)年の宮崎空港線開業に合わせ、車内がリニューアルされました。 リニューアル後は扉間の座席を、485系特急形電車の廃車発生品である回転式リクライニングシートに交換しています。これはいわゆる国鉄時代の簡易リクライニングシートではなく、JR化前後に換装された改良座席であり、座席背面のテーブルも使用可能です。 ロングシート部分もバケットタイプでヘッドレストを装備するなど、料金不要車両としては最高レベルのグレードとなっています。817系による置き換えで数を減らしているものの、宮崎地区で活躍を見せています。 なお、JR北海道のキハ54形気動車も、急行形仕様の3両は0系新幹線の転換式クロスシート装備で誕生したほか、特急形であるキハ183系や、789系電車1000番台のリクライニングシートに交換された車両も存在したようです。キハ54形も後継のH100形電気式気動車に置き換えられ、宗谷本線や留萌本線など、ごく一部でしか運行されていません。
安藤昌季(乗りものライター)