【筒井康隆氏(90)独占告白】頸椎負傷と入院生活を経て「老人ホーム入居」を決意するまで 施設に「パソコンだけ」持ってきた理由
かみさんの存在
2つの病院を足して、入院生活は4か月足らずかな。思ったのは、これだけのあいだ夫婦が離れ離れというのは、いかなる理由があろうともおかしいと。かみさんは4~5日に1回とか、その頻度で見舞いに来てくれて、心は休まりましたけどね。来年で60年という結婚生活で、こんなことはいままでになかったですよ。役者として芝居で地方に行っている時も、ついて来たりなんかしてたから。 だから、入院中は寂しいんだけれども、一方ではやっぱり、自分を愛してくれている人間がいるんだということを強く思うだけでも、なんか救われるんだよね。それはもう、お互いに愛し合っていることははっきりしている。何も言わなくても、はっきりしているわけだから。この施設にも二人きりで、ということです。 施設にパソコンだけ持って来たのは、いまは文房具やら原稿用紙やらがあっても、手が痺れて字が書けないから。僕にはファンとの交流の場として、『笑犬楼大飯店』というホームページがあります。でも、入院や施設のことは『笑犬楼』でも書いていないし、いまどういった状態かも一般の読者には伝えていないんです。だからこのインタビューで、そのあたりのことを知ってもらえたらありがたいと思います。 ※週刊ポスト2024年11月8・15日号