中村橋之助が映画初主演で見出した新境地 18~65歳の役を演じ分け、苦戦を乗り越えられた理由は
撮影直前にはプライベートで憧れのアメ車購入
一昨年夏の撮影の直前にはプライベートでうれしい出来事もあった。実は大の車好きで、これまでホンダS660、レクサスのスポーツクーペRCを乗り継いできたが、憧れのアメ車に一目ぼれし、購入したのだ。 「映画の撮影、歌舞伎の小倉公演も入っていたので、すぐに受け取れないと思って、希望ナンバーなし、保険も切り替えてくれなくていいので、急いで納車してもらったんです。しばらく実家の車庫に入れておいて、12月にもろもろ手続きをしました。翌年の熱海での撮影にはそのクルマで行きました。前のクルマ以上に荷物も乗らないし、人数も乗れないんですが、気に入っています。すごく目立つので、インバウンドで来た外国人にも写真を撮られますよ」と笑う。休日はドライブやメンテナンスするのが息抜きになっているという。 撮影は約40日間に及んだが、完成した映画には大きな手応えも感じている。 「やれることはやった、という達成感があります。完成した作品を観て、テンポ良く、物語の中で感じる葛藤や喜びが丁寧に描かれていて、多くの人に共感してもらえる内容だと思いました」。お気に入りのシーンは、後半でピアノを指一本で弾きながら回想するシーン、汽車の中で『ゴンドラの唄』を作曲する場面。「どちらも1人のシーンで苦労しましたが、その分達成感がありました」と語る。 初の映画出演を経て、これまで消極的だった映像作品への意欲が芽生えた。 「今まで映像作品には消極的だった部分がありましたが、この経験を経て、もっと挑戦したいと思うようになりました。この作品が多くの人に届き、皆さんの心に残るものになれば嬉しいです」と、今後の抱負を語った橋之助。映画『シンペイ』は、俳優としての可能性を広げる作品となった。 ■中村橋之助(なかむら・はしのすけ)1995年12月26日、東京都出身。屋号・成駒屋。八代目中村芝翫の長男。祖父は七代目中村芝翫。2000年、九月歌舞伎座『京鹿子娘道成寺』所化、『菊晴勢若駒』春駒の童で本名である初代中村国生を名乗り、初舞台。16年10月、父が36年間名乗った「中村橋之助」を四代目として襲名する。15年、三月国立劇場『梅雨小袖昔八丈』下剃勝奴、四・五月平成中村座『極付幡随長兵衛』極楽十三、『勧進帳』亀井六郎、八月歌舞伎座『逆櫓』日吉丸又六などを演じる。歌舞伎以外の出演は大河ドラマ『毛利元就』(1997年)、テレビ東京系連続ドラマ『検事・沢木正夫3 共犯者』(2015年)、『ノーサイド・ゲーム』(19年)。
平辻哲也